術者の位置と手 †
「胸腹の訓」の手技は、受け手は基本的には仰向けが良いと思われますが、座位でも可能です。
- 術者は受け手の右側に位置し、
- 仰向けの場合
- 胸、上腹部を扱う時には、右手を相手の下腹部に添え、左手で手技を行うのが自然でしょう。
下腹部を扱う時は、左手を胸部か上腹部に添え、右手で施術するのが自然だと思います。
- 座位の場合
- 胸、上腹部を扱う時には、左手を相手の背中に当てて支え、右手で施術する。
下腹部を扱う時は、左手を腰部に当てて支え、同じく右手で施術。
手技 †
導引口訣鈔では「撫でる」「さする」が多用されており、「〜より手を當て〜を越し〜に至る」等の表現がみられるので、文章からは実際の手技は基本的に一方向への「撫でる」「さする」だと思われます。
ですが、口訣鈔では手技での補瀉(摩=補、按=瀉)は重視しますが、経絡の流注方向やそれによる補瀉の記述も見当たらず、経絡は専ら身体部位名を表すとものとして使用されており、ひょっとしたら往復的に「撫でる」「さする」手技を用いるのも許されるかも知れません。
(実は、個人的には往復的「撫でる」「さする」手技で実験中)
胸腹の訓え 図解1 †
- 1.缺盆骨(鎖骨)に手を当て、そこから任脉上の璇璣、天突を越し左の腋下に至るまで数回撫でる。
原文:缺盆骨より手を當て、任脉通り璇璣、天突を越し左の腋下に至る。(數片摩つ)
- 缺盆骨:鎖骨。
- 摩つ(谷口版※では「摩づ」と表記):撫でる。
※谷口版:大黒貞勝編著『導引口訣鈔 (附)按腹図解』谷口書店 に附されている原文写し
- 2.乳の上「膺窓」辺りに手を当て、「膻中」の上「玉堂」付近を越して左「膺窓」を越す所まで撫でる。
原文:乳の上膺窓の位より手を當て、膻中の上玉堂の位を越し摩て、左膺窓を越して摩つ。
- 3.右の胸、「食竇」に手を当て、「中庭」を越し左の「食竇」を越し撫でる。
原文:右の肋食竇より手を當て、中庭を越し左肋食竇を越し摩つ。
- 4.肋骨の下、左の「腹哀」から右の「腹哀」を越すように、肋骨と肉を分ける。
原文:肋下腹哀を越して肉を分る。