RIGHT:近代デジタルライブラリー:[[小星/葛巻星淵著,中庸堂,明37.12>http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?tpl_wid=WBPA130&tpl_wish_page_no=1&tpl_select_row_no=8&tpl_hit_num=127&tpl_toc_word=+%B0%C4%CB%E0&tpl_jp_num=40049365&tpl_vol_num=00000&JP_NUM=40049365&VOL_NUM=00000&KOMA=3&tpl_search_kind=2&tpl_keyword=%B0%C4%CB%E0&tpl_sort_key=TITLE&tpl_sort_order=ASC&tpl_list_num=20&tpl_end_of_data=]]より ~ &ruby(なんぢら){爾曹};天に在る者を&ruby(おも){念};ひ、地に在る物を&ruby(おも){念};ふ勿れ。(哥羅西書第三章)~ ~ 肉の事を&ruby(おも){念};ふは死なり、靈の事を&ruby(おも){念};ふは&ruby(いのち){生};なり、安きなり。(羅馬書第八章)~ ~ &ruby(わ){妾};れは&ruby(めしひ){盲目};の按摩なり。~ 幼き時に親失せて、たよる&ruby(はらから){兄弟姉妹};一人なく、~ 身は&ruby(みなしご){孤児};の乙女にて、~ あはれ貧しき按摩也、~ ~ 玉なす汗の夏の日も、~ 氣息いきさへ氷る冬の夜も、~ 唯&ruby(ひともと){一本};の杖に&ruby(よ){倚};り、~ 唯&ruby(ひとくだ){一管};の笛吹きて、~ 此の世の中を渡る也、~ ~ されば昔はしかすがに、~ 不幸の&ruby(さだめ){宿縁};かこちつゝ~ 薄命の身を嘆きては、~ 天をも世をも恨みしを、~ ~ 「愛なる神」を信じ來て、~ 「&ruby(とは){永遠};の&ruby(いのち){生命};」を求め來て、~ 思へば嬉し、あゝ&ruby(わ){妾};が身、~ 今は世界の&ruby(さいはひ){祝福};を~ 一人にて負ふ心地せり、~ ~ &ruby(ひと){他人};は物見る眼の故に、~ &ruby(さま){形色};美しき現世の~ 惡魔に、あたら、&ruby(いざな){誘惑};はれ、~ &ruby(つみ){罪悪};の巷にさまよひて、~ &ruby(ほろび){滅亡};の淵に身を沈む。~ ~ 妾れには眼なし、然れども、~ みめぐみ深き我が神は、~ &ruby(たましひ){心靈};に眼をぞ與へける。~ ~ 汚れに満つる肉の世に、~ 地上の物は見えずとも、~ &ruby(とは){永遠};に&ruby(きよ){聖};けき靈界に、~ 天の光を認むべき~ &ruby(まこと){眞};の眼&ruby(も){有};つ妾が身には、~ &ruby(いざな){誘惑};ふ惡魔遠退きて、~ &ruby(は){羽};ぐくむ天使ぞ伴へる。~ ~ 吹く&ruby(ふえくだ){笛管};に&ruby(くす){妙};しくも、~ 神の&ruby(みこゐ){御聲};の聞ゆなり。~ つく&ruby(つえだけ){杖竹};に&ruby(くす){妙};しくも、~ 神の&ruby(みちから){御力};こもるなり。~ 妾れに&ruby(つまづく){躓};く憂なく、~ 妾れに迷はん恐なし、~ ~ 肉の&ruby(けらく){快樂};も何なりや、~ 地上の&ruby(さち){幸福};も何かせむ、~ 靈の者のみ&ruby(きよ){神聖};くして、~ 天の者こそ&ruby(とは){永遠};なれや。~ ~ 空しく消ゆる塵の世に、~ &ruby(はゆ){榮燿};る花をも紅葉をも~ &ruby(はら){拂};ひて&ruby(きよ){潔};き妾が袂、~ 過ぐるも&ruby(やす){平和};き春秋や。~ ~ 妾が得る&ruby(しろ){代};は少きも、~ 肉の&ruby(いのち){生命};を支ふべし、~ 妾が信仰は薄けれど、~ 靈の糧には餘りあり。~ 思へば嬉し、あゝ嬉し、~ &ruby(まち){市街};の&ruby(すみくま){隅隈};廻ぐる也。~ ~