按摩さんの日記・過去ログ





00/05/21


そう、ここは東村山市秋津町。
住み始めたのは、ホームページにある「インド日記」が終わる5年前。
「インド日記」の最初にあるように、プルは7年間快適に過ごした西荻窪のアパートをすべて引き払い、インドへと旅立ったのでした。

で、その半年後。
日本にいる彼女に中野の「ウィークリー・マンション」をあらかじめ予約してもらい、インドから中野へと帰国。
次なる定住地は全然考えてない状態で。

頭にあったのは「西武線沿線だったら西荻より家賃安いよ」という彼女の言葉。
という訳で1日、2日、西武線沿線のいくつかの駅で降り、不動産屋の張り紙を見て歩いたりしてみた。
狙いは治療院開業可の一軒家。
もちろん事務所や店舗(保証金うん百万!)を借りるほどの大金はない。

ただの一軒家なら予算に合う物件はいくつかあった。
でも、張り紙にある物件が本当にあるかどうかは分からないし、開業が可能かどうかも分からない。
ということで、とにかく試しに一軒の不動産屋さんに入ってみることに。
それが「武蔵野線新秋津駅」近くの不動産屋さんだった。

予算は取り敢えず一軒家が借りられる程度のものだし、店舗を借りるとなると保証金が必要なのは知っている。
その低予算で開業を望むという、虫のいい話しを切り出す訳だから何だかモジモジしてしまう。

「こんな予算なんですけどぉ、治療院を開業出来る一軒家って、、、ない、ですよ、ねえ?(*^^*ゞ」
応対してくた若い女性の事務員さん、一瞬目が点になるものの。
「え? ええ。(^^; ええとぉ……。」
ごそごそファイルを探す。
「これ位のご予算でしたら、あるんですけどねえ。治療院も兼ねるとなると、あとは大家さんとの交渉次第ということになりますけどぉ。」
と言いながら見せてくれたのは、予算よりほぼ4〜5万円上の物件ばかり。
「そ、そぉですよねぇ。(^^; 普通、これ位しますもんねぇ。(^^;;;」
お互いこんな→(^^;;愛想笑いが続く……。

と、事務員さん。
突然何か閃いたらしい。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 昨日、確か……。」
慌ててファイルを探し出す。
「あ、ありましたっ!(^O^) すごいですね! ありましたよっ! ピッタリなのが。 キャハハハハハハ!(^O^)(^O^)」
うれしそうにケラケラ笑い出す事務員さん。

その笑いに多少圧倒されながらも、ファイルを見てみると確かに予算ピッタリ。
それも一軒家は一軒家なのだけれど、二階が住居、一階部分がもとパーマ屋さんだったという店舗。
予定外に理想的な物件だ。
「これ、いいっスねえ」
「でしょ、でしょ?!」と自分のことのように喜んでいる事務員さん。

この後、実際に物件を見に行くことになるんだけれど、この時既に心は決まっていた。
理想的な物件以上に、あの事務員さんの笑いが気に入ってしまったから。
彼女とその物件に向かって歩きながら、「これから見に行く家がダメでも、あの人のところで決めようね。」と言っていた。

その家に住み始めて5年。
あの事務員さんも、彼女と付き合っている彼氏も、共に馴染みの患者さんになってくれたけど、どうやら不動産屋さんも辞めてどこかに引っ越してしまったらしい。


00/05/23


まるで梅雨のような天気が続いていたけれど、今日は気持ちよく晴れている。

風が好きだ。
こんな日は、窓を開け放して風の感触を愉しむ。
そうしていると、まるでこの部屋が、空中にあるような気がしてくる。
世界が大空になって、この部屋だけが浮かんでいる。
風通しがいい。(^^)


club1.JPG



風の強い日、ビルの上を鳥が飛んでいる。
風向きが変わっても、ビルに激突することもなく、うまく、ごく自然に身をひるがえして飛び続ける。
いつだったか、その鮮やかな「飛ぶこと」がとっても不思議で、ずーっと眺め続けていた。
と、「な〜んだ」と気が付いた。

鳥は、泳いでる。
鳥にとっては、この空気が、空が、海のように濃厚な液体のようなものなんだ。
そして、ぼくも、泳いでいる。

それ以来、空を飛ぶ鳥を見ると、自分の周りの空気が、手で触れられるような、濃厚なものだという感触を思い出す。


00/05/25


随分以前のことだけど、按摩で押す時に、息を吸っている自分に気が付いた。
確か学校とかでは、「押す時には息を吐く」と習ったっけ?

ぼくの按摩は、普通イメージする按摩やマッサージよりリズムがトロイ。
体重を、呼吸と共に腰、足に落としながら、ゆっくりと按摩する。
腰や足に落とした体重を手や指に乗せながら、相手のからだの感触を味わうように按摩する。

そう、この味わう時に、息を吸っていることに気が付いた。
感触を、呼吸と共に胸に吸い込んで、味わっている。

と、上の文を書いていたら、「闘いの日々」があったことを思い出した。
感触を味わうどころか、患者さんのからだと闘っていた日々があったんだ。(^^;


昔、川崎近辺のサウナで、マッサージのアルバイトをしていたことがある。
当時は操体法やセラピー、ボディーワークで生活するのが目標だった。
マッサージ(=按摩)はそれまでの、あくまで生活の糧を得る為の一時的なバイトだと思っていたのよね。(^^ゞ

マッサージに来るお客さんは、強くガンガン揉むことを望む人ばかり。
結構華奢なぼくは、揉む前によく「兄ちゃん、強くやってくれよお」と言われたものだった。
若いぼくは、その言葉を聞く度に「お前、強く揉めるのか?」と言われている気がして、カチンと来ていた。
「だったら、やってやろうじゃん」と、内心意地悪く燃えるプル。(^^;;

指が痛くはなるものの、強く押すのには自信があった。
「お客さ〜ん(く、くそっ! どうだっ!)。これくらいの(おりゃあっ!)強さでいいっスかあ?」
と、声はあくまで平静に聞く。
「お? おぉ(痛たた……)。丁度いいな。」
お客さんも「強く」と言ってしまった手前、絶対「もうちょっと弱く」とは言わない。
指が痛くても強く揉み続けるマッサージ師と、それに耐え続ける客。
意地の張り合い、我慢くらべ。

ま、いつもそんな感じではなかったけれど、結構そんなことがあった。
(な、何してんだ、ぼくは。(^^;;)

若かったとはいえ、情けない。(^^ゞ


00/05/26


「玄米正食批判試論」がやっと完結。(^^)

今を去ること10年ほど前。
当時発行していたミニコミ「ヒーリング・マガジン」を、スペシャル版として雑誌形式にして作り上げた。


club2.gif



88頁の厚さになったけれど、コピーから製本まで、全部手作りで仕上げた。
ミニコミの購読者以外の販売は、「ブッククラブ回」だけ。
それでも全部で700部くらい出たかな。
ほとんど彼女とふたりの手作りだったから、でかいホチキス打ちや体重を使ってのプレスとか、ヘトヘトに疲れ果て、終いには雑誌を見ると吐き気がしたりして。(^^;

その「ヒーリング・マガジン」に納めた一編が「玄米正食批判試論」。
ずーっと、「700部くらいのミニコミ雑誌だけじゃもったいない」と筆者の幕内先生に申し訳なく思って来たけれど、これでようやくもっと多くの人に読んでもらえる下地は出来たな。
でも、下地は出来たけど、このホームページ自体が多くの人の目に触れるかはまた別の問題なのよね。(^^;;

でも「玄米正食批判試論」は面白い。
幕内先生の食事療法にかける姿勢には圧倒されるし、玄米正食の裏話的ゴシップとしても(すんません(^^ゞ)メチャクチャ楽しいし。
そして、何より文章全体を通しての教条主義や知ってしまった人々への疑問、批判が好き。

ぼくもそうだし、患者さんを見てても、病気も含めて何か問題を抱えている時、そこには必ず何らかの「頑なさ」があるように思う。
「自分内教条主義」というか「思い込み」というか。
それぞれの人の経験や年齢に即した人生運営戦略。
ある意味それは、それまでの人生でその人が命がけで培ってきたものだから、間違っているはずはないし簡単には手放せない。
言い方を変えれば「知っちゃってる」訳だよね。
(ま、その割には、時期が来ればコロッと変わったりもするんだけど。)

「玄米正食批判試論」のテーマは、食事だけに限らない。

何らかの方法論、やり方、道しるべは必要だと思う。
でもそれはひとつの道具に過ぎなくて、道具には振り回されたくはない。
道具を「信じる」とか「教条主義」になるのではなくて、そゆ頑ななものじゃなくて、大切なのはもっとこう、柔らかくて暖かい、道具に対する「信頼」かなあ、と思ったりする。


00/05/30


週3回、夜だけ4時間のアルバイトに行っている。
荻窪にあるサウナ、「荻窪ラドンスパ」。
そこが来月、テレビ(東京12チャンネル)で紹介されるという。
何でも親子3代に渡って続いている商売の特集なんだそうな。

しかしこのサウナ、マッサージ師としてめちゃくちゃ居心地がいいんだ。
何しろ客層がいい。
何でかなあ?

大抵のサウナは、この間書いた「闘いの日々」で行っていたようなサウナ。
駅前で、しかも男性しか入れなくて、強揉みとか、ヤクザさんが多いとこ。
または今時な、家族で行ける「健康ランド」とか。

何故かそういうとことは違い、気さくな親しみやすいお客さんが多いんだよね。
サウナとはいえ三代続くお風呂屋さん。
地元密着型だからか。
ま、それもあるけど、一番は建物の雰囲気だと思う。

先日ウチの治療室の患者さんが、荻窪の方が近いというので「荻窪ラドンスパ」にマッサージを受けに来た。
その後会って話しをした時「頭がクラクラしそうだった」と言う。
「え? 何で?」
「なんか一歩足を踏み入れた瞬間、タイム・スリップしちゃった感じなんだもん。昔あんなとこあったよねぇ。」と言う。

ふふ。
そう言われるとよく分かる。
あそこ、なんか昔なんだ。
昔の温泉旅館みたいな感じ。
入ってすぐの受付の前には、「漬け物」とか「そば」なんかが、まるでおみやげのように床に並べて売ってるし。
畳敷きってのが、ま、雰囲気を形成している大きな要因なんだけどね。
受付がある階の上の階に、マッサージ・ルームと休憩出来る広間があるんだけど、この階がお勧め。

廊下にはふる〜いマッサージ器。
椅子の背中の部分に、こぶし大のウゴウゴ動くやつがついてる電動マッサージ器。
お金投入口には「一回20円」という表示が……。(^^;;
ホントに20円入れると動くらしい。(ぼくは試したことがない)
その隣には、あの懐かしい「ぶら下がり健康器」もあるし。

そんな昔の庶民的な空間に、庶民的な気さくなお客さんが集まるのは当然かもね。

ちなみにマッサージ料金も庶民的。(マッサージ師的にはちと辛い(^^;)
50分3500円。
サウナなしで、マッサージのみも可。
近くに寄った時、利用してみてもいいかもよ。



そうそう、この「荻窪ラドンスパ」の初代が93才のお爺ちゃん。
若い頃は、お風呂屋を二軒も経営するやり手だったらしい。
今経営は、三代目のお孫さんがやっているけど、毎晩閉店後のお風呂掃除もこ
なす現役。

前に何回か按摩したことがある。
側にいるだけで、何かとても静かで優しい気分になる。
腰が凝ってはいるものの、筋肉に張りがあって、感触はまるで60代。
揉んでいると、静かな空気はどんどん深まっていく。

温かくて優しい静けさ。
様々な経験を重ねて、ぼくの倍以上の人生を歩いて来た、からだ。
その静けさがありがたくて、懐かしくて、涙が出そうだったな。

「お爺ちゃん、からだ、若いね」
「ん〜? そぉかぁ?」
「90いくつだっけ」
「気がついたらよぉ、93だぁ」
「へぇ、アッという間だったの?」
「そうだぁ。アッという間だぁ。気がついたらよぉ、93だもの」

そうそう、お爺ちゃん、静けさ、といえば、操体法の橋本先生を思い出す。
橋本先生に会ったのも、先生が90歳の頃なのかな。
仙人のように飄々としていて、そしていたずらっ子のようなお爺ちゃん。
治療室の中や橋本先生の周りにも、あの静けさがあった。

同じお年寄りでも、中には虚しさや哀しさが伝わってくる人もいる。
いろいろな感情を、長い年月抱えて来たからだ。
そんなからだも愛おしい。

って、これ、実は随分前に掲示板に書いた文章なのであった。(^^;

でも、あのサウナの居心地の良さは、この初代お爺ちちゃんの持つ空気なのかも知れない。


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