*22-参-社会労働委員会-33号 昭和30年07月27日 [#x297f6d4]
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     ―――――――――――――
 
 ○あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 
     ―――――――――――――
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  ただいまから委員会を開会いたします。
 
  本日初めに当委員会付託の請願を議題に供します。
 
  速記をとめて下さい。
 
    午前十一時一分速記中止
 
      ―――――・―――――
 
    午後零時二十六分速記開始
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  速記を始めて下さい。
 
  それでは暫時休憩いたします。
 
    午後零時二十七分休憩
 
      ―――――・―――――
 
    午後二時五十六分開会
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  ただいまから休憩前に続き委員会を再開いたします。
 
  あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 御質疑を願います。
 
 ''○高野一夫君''
  政府委員にお伺いしておきたいと思いますが、政府の原案ではあん摩師の中にカッコして「マッサージ、指圧を含む」ということになっておりますが、これは試験の問題はあとで伺いますが、試験を受けてあん摩師の免状をもらうのだろうと思うのですが、カッコの中にある人たちもすべてあん摩師の免状をもらうことになろうと思うのでありますが、そのときの免状は、あん摩師の免状はもらうけれども、自分はマッサージを専門にやる、指圧を専門にやる、あん摩を専門にやるという場合に、たとえば指圧の場合、マッサージの場合にあん摩ということを看板に掲げないで指圧あるいはマッサージ、こういうようなふうに看板に掲げたり、あるいは広告をしたりすることはごうも差しつかえないのでございますか。
 どういうふうにお考えでございますか、その点をお伺いしておきます。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  御説の通りと考えております。
 
 ''○高野一夫君''
  そうするとあん摩師の試験を受けてあん摩師の免状をもらって指圧、マッサージと専門に広告をしても、看板を掲げても差しつかえない、こういうことならば実際的には世間から、お客さんの側から見れば、あん摩もマッサージも指圧もほとんど別個のもののように考えられ、かつ区別されるわけでありますが、それはそれでけっこうだと思いますが、試験はどうなりますか。
 試験はみんな同じ実技あるいは学理、同じ試験を受けたものがあん摩になろうともあるいはマッサージ師になろうとも、指圧師になろうともそれは御随意である、こういうことになりますか。
 それともその三者に対して多少なりとも何か実技なら実技のところで手心を加えた試験をする、こういうお考えであるかどうか。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  第一に試験の科目については、これは現在省令できまっておりまして、これについては特例を設けることができるということを今度の改正案に入れているわけであります。
 実際の試験の具体的なやり方については、あん摩、はり、きゅう云々に関しまするいわゆる審議会がございますので、審議会の意見をよく承わってきめるべきことだと考えておりますが、私どもとしましては、なるべく既存の人たちの試験に当りましては実情に合って、たとえば指圧的な手法を相当加味するように考えていきたいと現在思っております。
 
 ''○高野一夫君''
  そうしますと、率直に伺いますが、たとえば試験を受けて実は指圧を看板にしたい、マッサージを看板にしたいというような場合に、その指圧を看板にしたいという場合に、マッサージ術なりあん摩術はあまり得意ではない、できるだけその方の試験をやめてもらって指圧専門に行きたいから指圧の実技、試験だけ一つ受けさせてやっていただきたい、こういう希望があると思いますが、そういう希望はいれられますか、あなたの考えでは。
 それとも一応は、平均してあん摩術もマッサージ術も指圧術もすべて三つとも一応は受けなければならぬ、こういうことになりますか。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  現在御承知のようにあん摩とマッサージにつきましては、試験の科目としても、それから実技としても特別の区別を置かないで一本科目として取扱っておるわけでございます。
 考え方としては、指圧についても同じような考え方で参りたいと思いますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、既存の人たちに対する試験の取扱いについては、これは実情にかなった特別の考え方をしなければならぬと思っております。
 その場合にいわゆる指圧だけをやる、ほかのやつは全然やらない、この辺は非常に実は具体的な手法の問題になりますので、簡単には言えないと思いますけれども、考え方としては、基礎的にはすべてのものに一応通暁することを前提として、その上にプラスのそれぞれの得意というものを考えられるようなふうに考えていきたい、たとえば医師についてみますれば、将来産婦人科あるいは整形外科を標傍しようとするものにおきましても、一応医師としての試験をいたしておりますが、ある程度そういった考え方を中心によく研究いたしたいと考えております。
 
 ''○榊原亨君''
  ただいまその実技の試験のことでありますが、この点に関しましては、実情に即してあん摩あるいは指圧あるいはマッサージというものの実技の試験を実施するということで私どもは了解してよろしゅうございますか。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  さように考えております。
 
 ''○吉田法晴君''
  政府の提案理由に出て参りますが、あん摩、はり、きゅう、柔道整復師、指圧以外の医業類似行為を業とする者の教育期間を延期をいたしまして、三年間延長をして、そうして、これにはあん摩師試験の試験資格を認め云々、こういうことがございますが、巷間いわれているところによりますと、参考人等の意見を聞いてみましても、その中からあん摩の試験、それからここに書いてございます。
 あるいは政府原案によると、あん摩師の試験を受けるという以外に医師の助手的な役割を果すように云々という意見もございました。
 三年間、いずれにいたしましてもこの法律によるあん摩になるか、それともあるいは医師の補助的な役割を果すか、こういうことになるかと思うのですが、その点については具体的にどのように考えておられまするか、その点を一つ伺いたいと思います。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  医師の場合に、物理療法その他におきまして、電気でありますとか、あるいは光線でありますとか、その他の治療手段を使っておりますことは事実でございます。
 それに従いましてある程度自分の手下の者を使っていることもこれも事実であります。
 その一つの例として、レントゲンにつきましては、レントゲンの技肺の免許を受けなければならない、免許を受ければレントゲンの撮影に医師の指導のもとに当ることができる、そういうことになっているわけでございます。
 それで現在電気、光線そういったいわゆる物療等において、あるいは整形外科方面において使われておりますものについては、それは今後考えなければならない問題の一つだろうと思います。
 ただこれは現在問題になっておりますいわゆる療術行為として問題になっている、独立をして電気なり光線なりの治療的な行為をしている業態と全然種類が違うわけでございまして、なおかつ学問の程度その他につきましても、これは使う方の考え方というものも十分掛酌をしなければならないし、特にそういう人たちの就職に関する、いわゆる需給関係――言葉は悪いですが需給関係、そういったものをよほどにらみませんというと、かえって将来弊害を来たすことも考えられますので、その辺のところ、今お話しになりました問題は十分慎重に考えなければならぬ問題の一つだと考えております。
 
 ''○吉田法晴君''
  慎重に考えなければならぬというが、三年間なら三年間延びても今までのままほうって置いたら、そうすると三年間なら三年間の後にやはりまた同じような問題が起ってくる。
 そこでやはり方針というものを出されて、今のあなたのお話では、たとえばレントゲンならレントゲンの技術者になるというのも一つの方法かもしれない、しかしそれはほんの一部だろうと思います。
 そうするとあん摩師それからカッコはありますけれども、そのいずれかになるかは別問題であります。
 しかしその他のものについてはどういうようにするかという、たとえば教育なりあるいは試験なり、それから行きます方向というものが、三年なら三年の間に立てられませんと、三年たってまた実際にこれで生活をしている者をどうするのだという問題が起って参ると思うので、その点について、今すぐ方針があればお示し願いたい。
 それからどういう工合いにして方針を立てるのだという点がございますならば、一つお示しを願いたいと思います。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  言葉が足りませんでしたが、今申し上げました医師のいわゆる補助者としてのそういった技術者に関する制度というものは、現在のいわゆる療術行為というものとはむしろ関係なしに別個の見地からこれを考えなければならぬ問題で、いわゆる療術行為の一つの処理方策としてこれを考えるということは、その筋道において、出発点において私はいささか間違っている点がありはしないだろうか、そういうようにその点については考える次第でございます。
 現在いわゆる療術に関するいろいろな仕事をなさっておられる方を、できるだけ今度の法律によりましてあん摩等の仕事を試験を受けてやっていただくように十分指導いたしたいと思います。
 
 ''○森田義衞君''
  ただいまの御説明ですと、現在の既存業者でいわゆる無免許の者が、今度の法律によりまして指圧関係ははっきり試験関係に入っていくといったことになりますが、こういったあん摩なりはり師なりマッサージ以外に、ただいまお話しになりました光線療法あるいは電気療法といったものが、政府の御説明ですと、これらの業者もやはりこういったあん摩の試験を受けて転向してもらいたいといった御趣旨のように大体お伺いしたのでございますが、そうでございますか。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  原則的にはさように考えております。
 
 ''○森田義衞君''
  現在これらの光線業者あるいは電気業者といった者にははなはだいかがわしい者もある、弊害もあるといったことを政府もお認めになっておるのでありますが、現実に何千という業者があり、しかもある程度は療養効果を上げているためその利用者もあって、またそれらの患者から患者へと宣伝されておるものもあるやに聞いておる。
 だからこれらを大体取捨選択をして、そのうちよきものはやはり合法的にこれを認めるより仕方がないのではないかといった感じがするのですが、これらの業者が必ずしも私は政府の期待するようなあん摩師の試験を受けて生きていこうとは私は考えられないが、政府はその点で御自信をお持ちになっておるのですか。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  試験を受けるかどうかということはもとよりこれは本人の意思が中心となっておるのでございますけれども、われわれとしては、受けていただくことを期待をいたしております。
 
 ''○森田義衞君''
  私はこういった業者が特に将来ふえてくれとか、そういったことを期待しておるわけではございませんが、現実に何千という業者がある。
 しかも公共の福祉に反するようなものが現実にある。
 そういったようなものを、三年間の猶予という前に、早くこういったものを政府で認定いたしまして、公共の福祉に反するものは取締りを厳重にしてこれを禁止しなければならないのではないか。
 しかし、すでに八年間といったものが公然と公共の福祉に反しないといったことで、これまでの経過法律にあって認められてきておるという現実があるのだ。
 しかも、今後三年間これを認めようという間に、ただ八年間転職できなかったためにやるのだと、こういったなまぬるいことで三年後にこの問題が解決するとは私は思いません。
 特に職業の選択の自由ということは、憲法の二十二条によって公共の福祉に反しない限りはとにかく認められておる。
 あるいは営業の自由があるのだといったことで、これらの方々があん摩さんの領域を侵して特にその領域を狭めるといったようなことを私は考えておるのではないのでありまして、少くとも現在公然と職業に従事している者は、ある程度今後法的関係を考慮して、少くとも人体を扱っておるのだとすれば、あん摩さんでも、しかも身体障害者であるずいぶん不自由なからだを持ちながら、あるいは解剖学だとかずいぶんむずかしい試験を受けられて御資格をおとりになっておる。
 こういった苦労をしておられるので、そういうように人体を扱う者は、少くとも漫然と扱うべきではないのではないか。
 ためには、やはりこういう人には長年の修業期間を置いて、こういった理学上の何といいますか試験をする、あるいは人体に関するいろいろな解剖学やその他の試験をして、その上でまたその機械それ自体が、医師が使わなくても、こういう連中でも試験の受かった者は使えるという限界において、そういう機械も認定をしてやる、そうして現在の業者を少くともそれならば認めてやるといったような立法措置を講じなければ、私は政府の怠慢ではないかという感じをいたしておりまするが、その点におきまする政府の見解を聞きたいと思います。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  取締りという点から見ますれば、これはまあ終戦後ほかの部面もあるいはそういう面があるかと思いますけれども、この分野においても取締りの手を十分伸べていなかったことは、これは認めざるを得ないと思いますし、この辺は大へん私どもも遺憾に思っております。
 今後十分これらの取締り等の点については意を用いて参りたいと思います。
 ただ、今お話の点につきましては、これはまあお話のお考えもごもっとものような点もあると思いますけれども、全体としては、やはり今まで検討いたしました結果、指圧につきましては、あん摩、はり、きゅう、そういったものと同じような考え方で処理することが適当であると思いますが、その他のものにつきましては、そういうような措置をとるということは現在のところ考えていないわけでございます。
 
 ''○森田義衞君''
  その取締りが、療術であると申しましても、加持とか、祈祷とか、キツネとか、タヌキとかいったような医業類似行為は、そういうものは当然これまでの法律によっても認められていない。
 それは弊害があれば当然取り締るべきである。
 それ以外の電気業者、光線業者は、かつて届出をして八年間は認められてきたのだ。
 その間転業の方向にやろうとした。
 転業しなくても、少くともその事実を政府はこれまで認めてきたので、別に取締りの対象ではなかったのだ。
 そのうち弊害があれば、そういった公共の福祉に反する面から取締りをする必要がありましょうけれども、公然とこういうものをやってきたということは事実ではありませんか。
 だから、その事実の上に立って弊害を是正して、今後どういうふうに持っていくかという政府の方針をお立てになるのが今後の政府の態度ではないか。
 ただ漫然と三年間に転業さすといったことでは政府の責任は済まされないではないかと、こういうふうに考えますが、その点の政府の御見解を伺いたい。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  本質的には電気、光線等の仕事は医師のいわゆる補助行為として行われるべき性質のものだと、さように考えます。
 
 ''○森田義衞君''
  それならそれではっきりいたしておりますれば、現在の三年間の経過規定というものを漫然と認める態度はどういうことか伺いたい。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  三年の猶予を置きまして、今登録されておりまする約一万三千の人たち、このうちにはいろいろな方がおられると思いますけれども、しかもその内容はきわめて複雑多岐にありまして、簡単に右左と分類できない性格のものだと私どもは承知いたしておりますが、それらの人たちにこの特例の試験あるいは免許を受ける時間的な余裕を与える、そういう意味で三年間を適当だと考えまして三年間にしたわけであります。
 
 ''○森田義衞君''
  私は、医師の指導を受けなければいけないといったものを認めていくことは、それが弊害があるというなら、早くそれは法的措置を講ずるのが当然の国民に対する保健上の責任からいってゆるがせにすべからざる責任問題だと思う。
 単に八年間も待ったのだと、その上三年間も待つのだと、そうしてこれらがあん摩その他になってもらいたいということでは済まされないのではないか。
 そこにやはり医業類似行為として、医師の指導を受けなければならぬ範囲、身体の診断をしなければならぬ範囲、そういったもの以外にそういうものがあり得るかどうかといった検討を政府がいたしまして、それによってそういうものの弊害のないものだけを認めてやるといったような研究が政府においてたさるべきだと思うのですが、どうしてもこういったものは医師の指導以外にはレントゲンその他はあり得ないのだといった御見解か、あるいはそういったものを相当研究して、そしてそれの範囲によって特に弊害のないものは認めるといったことの研究の余地があるかないかといったことを聞きたい。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  過去八年間において私どもとしましては、できるだけこれらのまあ業態ないし実態というものについて研究をいたしました結果、今日指圧というものについては、これはあん摩、マッサージと、いわゆる同様にあん摩のうちにマッサージも含めて取り扱っていくことが適当である、かような結論に達した次第であります。
 
 ''○森田義衞君''
  指圧はそうでしょうけれども、今言った光線でありますとか電気といったものが、あん摩、そいつの中に今言ったものは認めてもいいが、これらのものはこれまでの結論では医師の大体指導のもとにしなければならぬといったような結論に達したなら、三年待たずして、もちろんその間に過程的には当然あん摩になる人もあるかもしれません。
 しれませんが、どうしてもそれ以外にならないという人はその方向をはっきりとさせてやらなければならないじゃないか。
 不安定な状態に三年間置くことはやはりこういった業態にあられる人に非常に不安感を与えるのじゃないか。
 そういった点でどうしてもあん摩でなければならないのか、同時にそれ以外のものについては、やはり研究の上で医学的医師の指導によってこういったものもある程度やる、どういうような方法でやるか目安をつけてやらなければ私は不安定であろうと思うのですが、早くそういった目安をつけてもらいたいと思いまするが、それにつきましての政府の見解を……。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  なるほどお話のように、理論的には今までの法律通りにこれを改正せずにすることが適当だと思いますけれども、しかし一部についてまあ特例の試験等を受けさせるということとも関連をいたしまして、三年間の猶予という意味において設けた趣旨でございまして、本質的には現在あります法律を変えている趣旨ではございません。
 
 ''○田村文吉君''
  関連して伺いますが、今のあん摩師の学校で電気療法も教えておいでになるのじゃございませんか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  現在のあん摩もある程度の電気器具を使うことは許されております。
 
 ''○田村文吉君''
  あわせて赤外線を使うとか、そういうような問題も研究されたことはございますか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  赤外線等につきましては、これはかなり強い刺激を与えるものでありまして、この使用を誤まると重大な障害を生ずるというところから、赤外線はこれは医師でなければ許可をしないという方針でございます。
 
 ''○田村文吉君''
  その今の電気の問題でございますし、また光線の問題でございますが、そういう問題は現実に今それで職を営んでいる人がある。
 これに対しては失業されては困るから三年の間に何とか一つ転業してもらいたい、こういうのが今度の法律の案でありますね。
 そこで、そういうように消極的に考えることも一つの方法であるが、また名前はあん摩師の学校であろうがどういう学校であろうがかまわないが、そういう電気とか光線療法の無害なもので、しかも有効なものが考えられたら、医師が指導してそういう人たちにもそういう新しい職業をこれからでも授けてあげるというような、ことが、いわゆるそういう今日の非常に失業者の多い場合においては必要なことではないか、またそれによって満足している患者の上からいけばそれも喜ばしいことではないか、こういうふうに考えられますのでございますが、今度の三年間に何かそういう点についてのあるいは学校で教えるなり、そういうような指導の具体的な方途をお持ちになっているかどうか。
 ただ漫然と三年の間に、もうそういうものはまかりならぬから全部あん摩師の仕事を習いなさい、それ以外にあなた方の職業は許しませんぞ、こういうことは少しく不親切に思うのですが、何か具体的にそういうものをどういうふうにするのだというような考え方がありますかどうか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  第一段の御質問でございますが、将来現在のあん摩あるいははり、きゅうというようなものに新技術を取り入れることを考えるべきではないか――少し御趣旨が違うかもしれませんけれども、さような点につきましては、私どもこれは将来の問題といたしましては、これを決して排除しない、あん摩術にいたしましてもマッサージ術にいたしましても、それはその後の医学の研究、人知の進みといいものに応じまして逐次改良されていくということは考えられることでありまして、私どももできますならばその指導ということも考えて参りたい。
 これは一般的な考え方であります。
 
  それから第二段の、今日まで一応電気あるいは光線等の療法を許されておった人たちが、この三年間の間にその仕事ができなくなって、その三年だけで以後は仕事ができなくなってしまう。
 それに対して何かその方法を考えておるかというような御質問かと思うのでありますが、先ほども森田委員からの御質問とかなり近い点だと思いますが、私どもとしましては、基本的にはあん摩、この中には今度の改正によりまして指圧も含まれるわけでありますが、さような術を修得していただいて、そしてそれに転業していただく。
 それについては私どもとしましてあるいは簡単な講習会なり何なりの方法で御援助をいたすということは考えてみておるわけでございます。
 
 ''○田村文吉君''
  その今のあん摩師の方に転業することについてのまあ講習会を開くとかいうことによって転業をやさしくしてやるということはわかるのでありますが、もう一歩進んで、電気なりあるいは光線なりというものを、今後治療のときには大いに有効に利用しなければならぬ。
 しかし専門の六年なり七年の大学を出た人でなければそういう術はできないのだということではあまりに不自由なんだな。
 そういう点からいってあるいは今のあん摩師の諸君が二年なり三年なりでそういう仕事ができると同様に、電気とか光線というようなものについてもできるような方法を考えてあげることが必要じゃないか。
 まあ私は今日新聞を見て、鳩山総理がこの夏休みの間に電気療法をやる、そして健康をさらに強めるというようなことが新聞に出ておった。
 これは多分お医者さんの指導のもとにやられることだと私は思うのですが、それだけの治療だけを専門にやる人が七年なり六年なりの大学教育を受けたお医者さんでなければ絶対やっちゃならぬのか、そういう点についての道を開く必要があるんじゃないか、そういうことを考えないでは少しく今民生安定の上からいって不親切じゃないか。
 こういうことは私意見ですが、何かそういうような方法をお開きになるお考え方はありませんか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  ただいま例を鳩山総理のことについておっしゃいましたが、これは先生も申されました通り、私どもが伺っておりますのは、医師が行われ、あるいは医師が直接指導されて行われる電気療法だというふうに承わっております。
 それからさような意味におきまして医師が直接責任を負いまして、医師のお手伝いというような意味で特別に資格を持っておられない方が手伝いをされるというようなことは、これは差しつかえないというふうに考えておるのでありまして、今日におきましても、いろいろ大学の物理療法の教室というようなところでは、中にあん摩あるいはマッサージの資格を持っておる方も相当おられますが、別に資格も何も持たずとも水浴療法ですとか、あるいはその他の光線療法等のお手伝いをしておる方も現在おられるわけであります。
 それから、たとえば医師の非常に大切な仕事でございます尿、糞便等の検査、あるいはそのほかの病理組織の検査というようなことにつきましても、これは医師自身がやるのが本体でありましょうけれども、なかなか忙しい方はそれが直接できませんために、助手を使っておられます。
 この助手も一部にはやはり衛生検査士とかあるいは臨床検査士という身分をきめてくれというような意見もあり、私どももそれを検討いたしておりますが、今日においては特別に資格がない方がお医者様の手伝いをしておられるのであります。
 さような意味におきまして、今の物理療法の手伝いをなさるということは、今日までいわゆる今の物理療法と申しますか、電気、光線の療法をやっておられた方々がお医者さんの手伝いを今後なさることは、これは一つの新しいと申しますか、一つの進み方であろうと考えます。
 私どもその意味におきましては、いろいろ働く場所のごあっせんとかいうようなものについては努力をいたしたいというふうに考えております。
 
 ''○田村文吉君''
  そこで問題がだんだんデリケートになるのですが、病院の物理療法の先生の所にいる場合においては無資格人でもいいんだ、町にいて相当の電気に対する知識、物理上の知識、また解剖学の知識も若干持っている人が開業して、お医者さんの方から依頼を受けて、この人についてはこういう電気療法をやってくれ、こういうようなことが今後起るとしたならば、その人は合法的なあれなんですか、どうなんですか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  私どもは、このような物理療法的な処置というものは、医師の直接の指導がなければ許さるべきものではないというふうに考えております。
 
 ''○田村文吉君''
  そこに問題があるのでありまして、今現にかりに五千なり六千なりの物理療法をやっている人がいる。
 この人たちがあすから今度あん摩師の中へお入りなさいと言ったところで、今さら手技を習ってもなかなか簡単には行かない。
 行かないから、やはり習い覚えた電気とか光線というものを医師と連絡をつけて、医師の治療のもとに、ちょうど医者が処方せんをもって薬剤師によって調薬をすると同様に、そういう療法をある指示のもとにやるというようなことは、今後考えられても行き得ることじゃないか、こう常識的に考えられるのでありまするが、そういうようなことについては、お考えになる余地はございませんか。
 
 ''○政府委員(曾田長宗君)''
  私どももいろいろ検討はいたしましたのでありますが、エキス線技師におきましてもさようでございまして、医師のもとにおいては仕事ができますが、医師のかりに指示書がありましても、その病院、診療所以外の所ではレントゲンを用いて患者の検査をすることはできないというふうになっておるのでありますが、私どももこの物理的な療法というものは、これはあくまでも医師の直接の監督のもとにおいて行わるべきものだというふうに考えております。
 
 ''○田村文吉君''
  より以上は私の見解を述べるにとどまりますから、しいては申し上げませんが、ただ現実には三年の間に約五千人の療術の方が、いわゆる指圧を除いた物理療法ですね、そういう方々が職を失わなければならぬという問題にぶつかるのですから、何とかして親切に考えてあげていただかなければならぬ。
 それには、世の中はだんだん分業の世の中でございますから、お医者さんは一々忙しくて助手もないからやれぬ、町にはそういうものを専門にやってくれる何ボルトの電流でもってこういう方法の療法がある、これを一つやった方がいいんだというような指示を与えるようなことによって、そういう人たちの生きる道を考えてやるということが必要じゃないか、こう考えるので、そういう方途にお考えにならぬと、ただいたずらに取締りを厳重にして今後三年の間にはそういうわけのわからぬ治療法はやめるんだ、こういうことでは、何かしら当局の御親切が届かないように思う。そこで私は方法を今後お考えになれるのじゃないか、また必ず考えれば道がある、こういうふうに考えますことを申し上げて、まあより以上は討論になりますから、御答弁いただかぬでもよろしいのですが、そういうことがあり得るのじゃないかということだけ申し上げておきます。
 
 ''○竹中勝男君''
  相当論議を尽されたようですし、また付帯決議の中でただいまのような問題もあるのじゃないかと思いますので、一つ議事を進行していただきたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
 
 ''○吉田法晴君''
  質問を二、三点。
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  どうか簡単に。
 
 ''○吉田法晴君''
  簡単にお尋ねをいたしますが、政府原案によりますと、指圧があん摩師の中に入る、そうすると実際にどういうことになるかということをお尋ねするわけですが、三年間は今まであん摩師の免状を持たなかった人も今のまま続け得るということになる。
 そうしますと、その指圧の人たちは三年間の間に試験を受けてあん摩師にならなければ営業はできなくなる、こういうことになるわけでありますが、その試験を三年間におやりになるためには講習等をおやりになる予定か、その点を一つ。
 
 ''○政府委員(高田浩運君)''
  講習等については、十分考えなければならぬと思っております。
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  他に御発言がなけらねば、質疑は終了したものと認めたいと思いますが、御異議ございませんか。
 
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  御異議がないと認めます。
 
  それではこれより討論に入るのでありますが、ちょっと速記をとめて。
 
   〔速記中止〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  速記始めて。
 
  それではただいまより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにして、お述べを願います。
 
 ''○榊原亨君''
  私は、この際本案についての意見を申し述べたいと存ずるのであります。
 
  本案につきましては、私どもいろいろ公聴会その他におきまして慎重審議をいたしました結果でありまするが、結局八年間の間これらの医業類似行為につきまして政府が結論を出すことをせずにおられたということにつきまして、すでにこれらの業者につきましては現に行なっておられる方が一万数千名あるというような現状にかんがみまして、どういたしましてもこれらの方々に対する措置を講じなければならぬということは私どもわかるのでございまするが、そのうちで特に指圧につきましてこれをあん摩の中に入れますことにつきましては、ただいままでいろいろの質疑応答を通じまして判明いたしましたことは、これらの指圧、マッサージ、あん摩と申しますものは、その原理におきましてもその技能それ自身の技術範囲におきましてもほとんど同じものであるのでございまするが、その流儀におきましては、一応異なっておるものと認めざるを得ないのであります。
 申しますならば、柔道におきましてもレスリングにおきましても相撲におきましても、いろいろ術技があるのでありますが、その基本的術技は共通でございましても、それを行います上におきましてはいろいろ流儀がある。
 また庭球におきましても、この中に硬球と軟球とあるようなわけでありまして、これらの点から申しましても、これらにつきましては、一応種類を認めざるを得ないのであります。
 ことに厚生省は、現行法規におきましても、その広告をいたします場合には、マッサージを広告していいというのでありまするが、広告の制限におきましては、種類より以外にこれを広告することはできないということが書いてあります。
 また一面、厚生大臣の指示の範囲におきましてもこれを指示しておらぬというようなことから申しましても、どういたしましてもこれらのものは一応の社会通念上種類の異なっているものと認めざるを得ないのであります。
 従いましてこれらのことにつきましても、あるいは受験科目におきまして、あるいは今後のいろいろの取締りにおきましても十分考慮すべき点があると思うのでございまするが、これらのことにつきましては省令その他に譲りまして、この際は一応原案を認めることといたしまして、なお、この原案運営につきましては、特に私どもは、この際私どもの要望を提案いたしまして、委員皆様方の御賛同をお願いいたしたいと思うのであります。
 
  ただいまより、本法案に対しまする付帯決議をする動議を提出いたしたいと存じます。
 その案文を一応朗読いたします。
 
     附帯決議案
 
  医業類似行為に関しては、政府はその業態を把握、検討の上左記事項に関し適当なる措置を講ずべきである。
 
      記
 
  一、第十九条第一項の規定による届出をした既存業者であって本法に認められないものについては猶予期間中に充分な指導を行い国民保健上弊害のないものにつき将来適当な措置を講ずること。
 
  二、あん摩師等のうち身体障害者については本法運営に関し特別な考慮を払うこと。
 
  三、所謂無免許あん摩その他の無免許営業者に対しては、厳重なる取締を励行し、その根絶を期すること。
 
  右決議する。
 以上であります。
 
  第一項に申し上げておりますのは、本法に、今政府提出の原案によりまするというと、現に指圧をしておられる方々は一応の法的措置ができるのでございまするが、先ほどから問題になっておりますところの、本法に規定せざるその他の医業類似行為者に対しましては一応措置が抜けることになりまするので、これらのものにつきましては、現にやっておられるところの技能があるいは国民保健上疑義のある点もありまするので、これらは当局において十分指導されまして、そうして国民保健上弊害のないという程度になりましたときに、将来三年間の猶予期間中適当な処置を講ぜられたいという趣旨であるのであります。
 
  第二の「あん摩師等のうち身体障害者」云々という項目につきましては、もう申すまでもありません。
 現にこの業に尽しておるところの六〇%以上の方々が身体不自由者でありますので、それらの方々が本法運営をいたしますることによりまして、その業態が侵されたり、あるいはいろいろの不安が起るということでは私どもこの目的を達することができませんので、この点につきましては、特に運営上考慮を払うべきであるという意味であります。
 
  第三番目は、御承知のようにこれらの法によって規定せられていない無免許のあん摩その他の無免許の方々が、ことに健康なるからだを持っておられる方々が無免許でこれらの業務を行うということにつきましては、私どもは単に国民の保健衛生上ばかりでなしに、先ほどから申し上げました意味におきましても、十分取締っていただきたいと思うのでありますが、これらにつきましては当局はいまだ十分の取締りがないということは、先ほどから質疑応答において明らかなところであります。
 従いましてこれらを励行されまして、その根絶を期するということを私どもは考えておるのでありまして、以上の意味におきまして、この付帯決議案を提案いたす次第であります。
 
 ''○山下義信君''
  私は、ただいまの榊原委員の付帯決議に関する動議に賛成いたします。
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  榊原委員の動議に御異議ございませんか。
 
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  他に御意見もないようでありますから、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
 
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  御異議ないものと認めます。
 よってあん摩師、はり師、きゅう師び柔道整復師法の一部を改正する法律案につきまして採決をいたします。
 本案を原案の通り可決することに賛成の諸君の挙手を願います。
 
   〔賛成者挙手〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 
  次に、討論中に述べられました榊原委員提出の付帯決議案を議題といたします。
 
  榊原委員提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに御賛成の諸君の挙手を願います。
 
   〔賛成者挙手〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  全会一致と認めます。よって榊原委員提出の付帯決議案は全会一致をもちまして、本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 
  なお、本会議におきまする口頭報告の内容、議長に提出する報告書の作成その他の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
 
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
 
 ''○委員長(小林英三君)''
  御異議がないものと認めます。
 
  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりまするので、本案を可とせられる方の順次御署名を願います。
 
   多数意見者署名
     加藤 武徳  高野 一夫
     吉田 法晴  阿具根 登
     山本 經勝  森田 義衛
     有馬 英二  長谷部ひろ
     谷口弥三郎  榊原  亨
     田村 文吉  常岡 一郎
     松岡 平市  山下 義信
     竹中 勝男  相馬 助治
 
 ''○政府委員(紅露みつ君)''
  あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案を提出いたしまして以来、委員の皆様におかれましては非常に熱心に御審議をいただきまして、敬意を表しまするとともに感謝を申し上げる次第でございます。
 ことに医業類似行為につきましては、長い間解決を見なかった問題でございまするだけに、問題も非常に多くここに含まれておると存じます。
 それなればこそ、ただいまの三項目にわたりまして付帯の御決議をいただいたわけでございまして、政府といたしましては、この御決議の趣旨に従いまして、今後十分に本問題を検討いたしまして、善処いたす所存でございます。
 
     ―――――――――――――
 
 

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