穏やかじゃないタイトルをつけちゃいましたが。(^^ゞ
 原則論としては、こういうタイトルにならざるを得ないということでして。
 法律は、時代や世論によって、その解釈、運用が異なったりしますからね。
 
 ・受刑者にエステ、CADの職業訓練…法務省が来年度から(読売新聞) - Yahoo!ニュース
 [[http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080112-00000003-yom-pol>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080112-00000003-yom-pol]]
 
 >法務省は来年度から、刑務所の受刑者を対象に、顔の手入れや脱毛など
 >全身美容サービスを提供するエステティシャンなどを養成する職業訓練
 >を新たに始める。
 
 エステティックの主要な業務内容は、上記記事にもあり皆さんもご存じなように全身美容サービス=全身オイルマッサージです。
 テレビのCMでもよく見ますよね。
 
 ですが、厳密に「あん摩マツサージ指圧師、はり師及びきゆう師に関する法律」(※以後「あはき法」と略します)に照らすと、あはき師免許取得者以外がオイルマッサージを行うということはバリバリの違法行為です。
 ちなみにこれは、現在のあはき法運用において実質的に機能していない条文によれば、という話なのですが。
 ですが、実質的に機能していない条文があるということ自体、おかしくないですか?
 
 
 ***免許所持者以外は違法 [#wd8ce96d]
 
 あはき法のトップ、第一条には高らかにこう宣言されています。
 
 &color(darkred){第一条};
 &color(darkred){医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。};
 
 ここで注意してほしいのは、「あん摩、マツサージ若しくは指圧」という名称。
 「あん摩」も広義としてはジャパニーズ・トラディショナル・マッサージと呼べるマッサージに含まれる行為、名称ですが、敢えて「マッサージ」と区別して記述してあるので、ここで述べられている「マッサージ」とは狭義の西洋由来のマッサージと考えるべきです。
 実際、鍼灸マッサージ学校でもそう教えられます。
 
 さて、西洋由来のマッサージの特徴とは何でしょうか。
 それは、あん摩や指圧のように、衣服の上からの施術ではないということです。
 皮膚に直接触れて働きかけるマッサージ。
 ベビーパウダーのようなタルクを塗布して行うマッサージもありますが、最も広く行われている代表的なものがオイルマッサージです。
 
 ね。
 あはき師免許無しで、マッサージの代表選手たるオイルマッサージを業務とすることは、あはき師法違反なのですよ。
 
 ***美容目的だからいいんじゃない? [#z399baa7]
 
 当然そういう意見が出ますよね。
 ぼくもそう思います。
 
 ちょっと複雑ですが、ここであはき法第十二条が顔を出します。
 
 &color(darkred){第十二条};
 &color(darkred){何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。};
 
 ここで出てくる「医業類似行為」という名称がわかりにくいですよね。
 医行為とか医業とかが医師免許を持った人しか出来ないのはわかりますが、それの類似行為って?
 第一条の人以外ってことですから、「あはき業」のいわゆる治療に類する行為、業のことを規定しているんだから、やっぱり美容目的は関係ないんじゃない? とかそう思うでしょ。
 でも、ダメなんです。
 
 法律を解釈、運用するにあたって、いろいろな疑義が生じます。
 それに対して、厚労省(以前の厚生省)から回答や通達が出るのですが、この「医業類似行為」に対しては、昭和41年に医事第一○八号としてキッパリ、サクッと言い切っています。
 
 &color(darkred){医行為又は医業類似行為(広義とする。)であるか否かはその目的又は対象の如何によるものではなく、その方法又は作用の如何によるものと解すべきである。};
 
 ここでの文脈からいえば、要するに「医業類似行為かどうかは、目的がどうであれその方法が医業類似行為と同じであれば医業類似行為と解すべき」な訳です。
 マッサージを業として行っていたらそれは医業類似行為だよ、ってことですね。
 
 ここまで見てきたように、オイルマッサージが主業務であるエステティックは明らかにあはき師法に抵触する職業です。
 あはき師免許無しでこの業を行うことは、当然違法行為にあたるはずです。
 なのに、何故今まで法に問われることなく、またあはき師会及び関連団体から大きな批判も出ることなく、今ある一大産業になり得たのでしょうか。
 まったくもって不可解です。
 
 過去の国会議事録を調べてみると、あはき師法に関しては療術師やカイロ、整体が問題視されたことはあります。
 ですが、エスティックが国会で取り上げられたのは、回数券や会員登録等の商取引法関連が主で、次に脱毛等の医師法関連のみです。
 あはき師法に関連して取り上げられてたことは一度としてありませんでした。
 何故なのでしょうか。
 
 推測に過ぎませんが、あはき師会等にとって自らの職域に関連する療術師や整体、カイロ等は大問題になり得ても、異業種である美容業界のエステティックは眼中になかったのではないか、ということです。
 まぁ要するに、目先の利益と無関係なことには感心を示さなかった、ことなのでしょうか。
 
 他に、エステティック業はオイルや化粧品等の使用や販売を通して、化粧品、医薬品業界と深く関わっていると推測されるので、そういった資金力、政治力も影響しているのかも知れません。
 が、この辺のことは全然詳しくないので不明。
 
 ***そろそろあはき師法を改正しませんか [#v5a2ef50]
 
 ともあれ、エステティックは厳密にいえばあはき師法に抵触するにも関わらず、その部分を特に問われることなく、今では晴れて法務省が管轄する刑務所の職業訓練に採用されるまでになりました。
 この事は、ぼくには大きな象徴的出来事に思えるのです。
 
 今では、あはき師業以外の足裏、アロマ、タイ古式等、リラクゼーション目的のマッサージ店を街のアチラコチラで見かけるようになりました。
 これらに関して国は、今まで客観的に容認というグレーな態度で臨んできたのですが。
 今回法務省が職業訓練にエステティックを採用したということは、(厳密には)あはき師法に抵触する業務を「国が主体的に推進している」、ということにもなるのです。
 
 ※リラクゼーション目的の民間療法的マッサージや整体、カイロが国によって許容されてきた経緯は、按摩Pukiwiki内の「[[無資格マッサージ問題・まとめ>http://tao.main.jp/anma_pukiwiki/index.php?%CC%B5%BB%F1%B3%CA%A5%DE%A5%C3%A5%B5%A1%BC%A5%B8%CC%E4%C2%EA%A1%A6%A4%DE%A4%C8%A4%E1]]」を参考にして下さい
 
 
 「癒し」という言葉がこれほどまでに流通している社会です。
 もう、美容やリラクゼーション目的のマッサージは、あはき師が独占する職業でもないでしょう。
 あはき師法第一条の主目的は、国民の健康を損なう要因を排除する為です。
 事実、過去の最高裁判所の判決理由で「医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」とあります。
 エステティック業界が現れてから、そしてまたリラクゼーション目的の民間療法的マッサージが出現してから、そのマッサージ行為自体に顕著な危険性が認められたことはありません。
 
 &color(darkred){第一条};
 &color(darkred){医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。};
 
 この第一条のマッサージの定義を医療目的に限定し、昭和41年に出された医事第一○八号
 
 &color(darkred){医行為又は医業類似行為(広義とする。)であるか否かはその目的又は対象の如何によるものではなく、その方法又は作用の如何によるものと解すべきである。};
 
 上記を、目的(美容またはリラクゼーション等)によっては医業類似行為とみなさない旨改正すべきではないかと思います。
 
 また、国がカイロや整体を業として容認しているのですから(※[[無資格マッサージ問題・まとめ>http://tao.main.jp/anma_pukiwiki/index.php?%CC%B5%BB%F1%B3%CA%A5%DE%A5%C3%A5%B5%A1%BC%A5%B8%CC%E4%C2%EA%A1%A6%A4%DE%A4%C8%A4%E1]]を参照)、第十二条は既にその機能を失っています。
 この条文も見直すべきでしょう。
 
 &color(darkred){第十二条};
 &color(darkred){何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。};
 

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