あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法公布


1-参-厚生委員会-31号 昭和22年12月06日


○委員長(塚本重藏君)

御異議ないと認めます。
尚皆樣にお傳えいたしますが、衆議院では両法案共通過いたしまして、本院に正式に付託になつたそうでありますから、御承知を願います。
次にあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法案についての質疑を続行いたします。
通告がありますので、小林委員


○小林勝馬君

皆樣にお許しを得て置きたいと思いますが、これは私にとりましては、一番重要の法案でございますから、一つ多少御無理を申上げるかも知りませんが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

先ず第一点にお伺いいたしたいことは、第二條の学校又は養成施設を終えなければ試驗を受けられないとした理由について、政府当局の御回答を願いたいと思います。
尚理容師法案の中には、次の試驗は毎年何回行うというふうに謳つてございますが、この点を本法案には何ら明示してありません。
その点もお伺いいたしたいと思います。

第二点といたしまして、盲学校及び認可指定されたる鍼灸学校その他これらの類似する学校に対して、政府はその施設を改善せしめて、公けに認定する御意思があるや否や。

第三点といたしまして、あん摩とマツサージに対する区別の点について、政府の御見解をお伺いいたしたい。
それから第四点といたしまして、第四條の「外科手術を行い、又は藥品を投與し、若しくはその指示をする等の行爲をしてはならない。」と、こういう條項がございますが、塗布藥その他の使用の限度をお伺いいたしたい。
例えば灸の化膿した場合などに手当するものも、マッサージを行う場合に、濕性には、ワセリン、グリセリン、乾性には亞鉛華、滑石末等を使用するのでございますが、こういうものの使用制限をお伺いいたしたい。
 その次にお伺いいたしたいのは、第十一條施術所の規格等を省令で定めるとありますが、この概略を承りたいと思います。

先ずそれだけ先に承りたいと思います。


○政府委員(東龍太郎君)

第一の御質問の、何故に学校教育を必須の條件としたかという点でありますが、今回のこの法案の根本の経緯につきましては、既に御説明いたしたことと存じますが、その結論といたしまして、あん摩、はり、きゆう等の医療補助術としての程度を、そうして從つて又それを施す人の教育の程度を高めるということが、これが法案として提案しますことの、絶対必要條件の一つでございます。
從つて成る程、これらの手技手法は、敢て学校教育がなくても、修練によつて上達し得るということが過去の事実でありますし、只今もさような認識もあろうと存じますが、併しながらその術それ自身は、これが人間の生命、健康等に直接に関係のある、極めてこれは重要であり、崇高な療術であります。
從つてそれを行う人は、ただ單に一技術のみならず、その人それ自身の教養において或程度以上のものでなくてはならない。
そのためには現在の我が國におきましては、学校教育が唯一とも申してもよろしい青少年の教養の方法であります。
從つてこの学校令によりまする或程度以上の、即ち新制高等学校への入学資格を持つぐらいの程度の人が入つて、そうしてそこで教育を受けて、立派な一人前の術師となるという、つまり術そのものの練達は勿論のことであるが、その背景をなすべき教養を今よりも遥かに高めて行くべきであるというところから学校教育を必須の條件といたしたのであります。

 次に第二問でございました試驗の回数を明記していないというお話でありますが、これにつきましては画一的に年に一回とか二回とかいたしますよりも、各府縣の実情によりまして、そうして府縣において必要と認められる程度、一回以上にも亘りまして、頻回に行われましてもよろしいのではないかと思いますので、敢て画一的な回数を規定いたしませんでした。

 第三問は、御質問の趣意が実はよく呑み込めておりませんので、若しお答が或いは齟齬するかも知れませんが、それは現在ある施設を整備することによつて認定するつもりかということでございますが、勿論一定の規格と申しますか、必要の最小限度の要件を充たす條件が整備された曉におきましては、現在存在しておりますものも認定を受けるわけでございます。

 第四は、あん摩とマッサージとの区別はどうか、これはとり分けた理由はどうかというお問いだと思いますが、これはあん摩術がいかなるものであり、マッサージ術がいかなるものであるかということは、私が申上げるまでもないことと存じますが、その成り立ち、歴史と申しますか、において異なつたものであり、一方は和漢、東洋においてその発祥をしたものと思います。
マッサージというものは、むしろ西洋の医学の発達と共に、その原理によつて今日まで発達して來たものと承知いたしておりますが、これらの名称を必ずしも同一にしないで、そのままに用いておりますのは、要するに今までの歴史的の用法、そのままをとつておるのでありまして、あん摩とマッサージとの、これを一にすべきか、或いはこのままにすべきかという御議論はあると思いますが、この法律では元來の目的が現行の営業取締規則に代るべきものを法律に差当りその処置をとることを主眼としております建前上、在來のものを成るべく支障のない限りは、成るべくそのままで慣用して來たというつもりでございます。

 次に御質問は、藥品の使用或いは又、殊に塗布藥等の使題の問題でありますが、勿論ここに書いてありますのは、すべての薬品の使用を禁ずるという意味ではないのでありまして、要は医師が、或いは医師のみが当然行うべきような、さような外科的の手術であるとか、或いは藥品の投與、若しくはその指示というふうなことをやつてはならないのである。
併しながらそれぞれの術において当然用いられるべき、又必要であるような、藥品の塗布等の処置は、これを禁ずる條項ではないのであります。

 それから最後の御質問は、施術所の規格等について省令を以て定めるというものの内容を知らせろというお話だつたと存じますが、只今まで一應檢討いたしております程度におきましては、いずれもこれらの施術の内容は、比較的に小規模で行われるものであり、且又、比較的危險の少いものでありますからして、施術所の構造、設備につきましても、概ね次のような規定で足りるものと考えております。
先ず廣さがその施術に適当と思われる廣さであること、それから又その施術所は採光、並びに換氣等が適当なものであること、尚施術に必要な消毒の設備があること、大体かような程度の点に、具体的の企画を定める基準を置けばよろしいのではないかと考えております。


○小林勝馬君

第一の質問に対しましては分りましたが、第二の質問の私の聽かんとするところは、只今指定とか認可とかなつていない、いわゆる私立の鍼灸学校その他についての質問でございましたが、一定の整備をして、規格に合えばよろしいというふうに私は拜承したのでございます。
それからその次の第三の、あん摩と、マッサージに対する区別は、只今お聽きしますと、別段名称だけの話でないというように拜承いたしました。
この法案におきましても、あん摩の中にマッサージを含むというふうになつておるようでございます。
それから第一の、程度を高める。
絶対必要條件でこの学校の卒業云云というお話でございましたが、從來マッサージは四ケ年の修業年限をやつておりまして、受驗の資格としておるのでございます。
本案によれば二ケ年となりまして、その資格の向上を図ると仰しやる政府の目的とちよつと違反しないかと思うのでございますが、この点を承りたいと思います。
元來あん摩というと、一般になんとなしに差別的に見られておるような現状でございますが、これはあん擦術そのものが立派な療術だと思うのでございます。
併しこれを行なつておる術者が治療的に行わなくて、慰安的にだんだん流れて來たというものが多かつたために、いつとはなしに本來の目的を逸脱しまして、慰安行爲を代表するごとき言葉に、あん摩というものは用いられておるように私は思つております。
マッサージは治療的行爲を主といたしておりますから、マッサージという言葉は社会的にもなんら卑下していない。
いわゆる治療的というふうな態度を示しておるのでございます。
かかるが故に、この際政府においては、内面的にも外面的にもマッサージという字句を用いて、あん摩の名称を出さずにやる方が、先程から仰しやる政府の御趣旨に副うのじやないかと思うのでございます。
併し一般社会の要求は治療的あん摩も必要としますが、單なる慰安あん摩を要求することの大きいことも一般に認められるところでございまして、慰安あん摩をやつておるものが多数あることによつても、これは立証できるのでございます。
これによりまして、この盲人の特殊職業として殆ど無試驗に近い、無試驗と申しては行き過ぎかも知れませんけれども、程度の低い方法によつて今まで許されておりました。
乙種あん摩の大多数はこの慰安あん摩をやつておつたのでございまして、この慰安あん摩に相当するものも社会上必要じやないかと認められるのでございます。
この際政府は治療的あん摩とマッサージとして表現して頂きまして、鍼灸同樣に四ケ年の修業年限を與えて貰い、慰安的あん摩の方は從來の乙種あん摩のように簡易なる試驗、又はその他の方法によつてこれを許可して、單にあん摩として二つに区分する御意思はないかどうかという点と、かようにすることによつて、この修学の能力のない盲人が、單なる技術の習得のみによつて救われ、從來の盲人救済の趣旨にも副うものと思われるが、この点政府の御所見を承りたいと思います。


○政府委員(東龍太郎君)

教育の程度を高めることが必要條件であるのに、在來四ケ年であつたものを、二ケ年にしたのは矛盾ではないかというお話でありますが、成る程年限から申しますというと矛盾のようであります。
併しながら又そのあん摩、マッサージ等の技術をやりますのに、その以前における基礎訓練と申しますか、基礎教育と申しますか、すでに基礎が以前よりは遥かに高くなつておりますので、比較的短い時間においても習得し得る筈である。
事実においてはそのために内容を低下する結果には至らない予想、そういう考の下に二年といたしたのでございます。
それからあん摩とマッサージと、いわゆる慰安と治療というふうな見方で、これを二分する意思はないかというお尋ねでございますが、只今までのところ、私共はさようなことを考えては参つておりません。
と申しますのは、あん摩の術の実体におきまして、それが慰安であり、或いは又治療であるというようなことを明らかに間違いなく区別するということは、これは至難の業である。
私共といたしましてはやはりこの全部をあん摩、而もそれは見方といたしましては、医療に対する補助の技術であるという観点から、あん摩、マッサージを一貫して一つに考えて参つのであります。


○小林勝馬君

只今御説明によりますと、あん摩もマッサージと同等に考えておるというお話でございますが、私のお聽きしておるのは、この際これを只今御説明申上げた通りに、両樣に分けることが至当じやないか、その点をお伺いしておるのでございまして、その点の御回答をお願いしたいと思います。


○國務大臣(一松定吉君)

私は素人ですから、あん摩とマッサージが何処が違うかということを科学的に区別するということはできませんが、これは結局常識を以て判断して貰うということの建前から、あん摩の中にマッサージを含むと書いてあるのはその意味でありまして、あん摩とマッサージを正確に区分する一線を割するというようなことはなかなかむずかしい。
あん摩の施術の中にマッサージの施術のあることもありましよう。
マッサージの中にあん摩をやつておることもありましよう。
混同しておるところもありましようから、これだけはマッサージでやる、これだけはあん摩でやると区別して、その線以上に逸脱すればマッサージになる。
この線を逸脱すればあん摩になるということでなくして、あん摩とマッサージと殆ど同じような類似の施術であるという建前から、一括してあん摩として、その中にマッサージを含む。
こういうことに規定した方がいいということで、こういうことに書いたのでありますが、ただ修業年限の点でありますが、これは今東政府委員から御説明申上げましたように、少くとも中等学校以上を卒業した者でなければ、公に認定された学校又は養成施設に入ることができんということになつておるのであります。
そういたしますと、中等学校卒業ということになると余程教育の程度が今までより高い。
ただ小学校を出て、あん摩の先生のところにおつてやつておりさえすれば、それでもういいということとは違う。
少くとも聾唖学校、盲唖学校、唖学校そういうところを卒業した者であつて、それで第二條の認定された学校又は養成施設の場所に入るということでありますから、基礎科学が高いのであります。
その基礎科学の高い者が尚二年間もやれば、もう十分であるという建前から、実は來たのであります。
それを今あなたのお仰しやるように基礎科学の、小学校を卒業して中等学校を出て、その上で四年やることになりますと、目の見えない、而もそれによつて生活の資材を得ようというような貧困の子弟の盲唖というような人に向つては、少し課程を課することが重くなることになる。
だから二年経てば大概それらのことをやらしてもいいではないか、今までのあなたのお仰しやるように盲唖学校を出た人の基礎が中学校を卒業した者よりも低かつた。
そういうところを実は勘案したのであります。
その点を一つ御了承願いたいと思います。


○小林勝馬君

大臣のお言葉はよく分りますが、私の申上げるところは、マッサージと鍼灸は今まで四年で、その一歩上にあつたような状態なのでございます。
それであん摩は二年で下にあつたような状態であつた。
それを今度は、あん摩の中に、一歩高いものを下に嵌め込んだというのが、ちよつと私共といたしまして納得行き兼ねるところでございまして、そういうふうにあん摩を助けるという御意見ならば、先程私の申上げてあるように、慰安的あん摩として別段それに教育の必要はない。
いわゆる技能だけでもよろしいという程度のあん摩というものを別にお作りになる御意思はないかということを聽いておるのであります。


○國務大臣(一松定吉君)

それは今現在やつておる人の既得権を認めるということを先ず頭に入れて置かなければならんことであります、今やつておる人は既得権を認めておる。
但し、今後新たにやるについては、こういうふうに地位を向上して、世人の信頼を高め、その本人の地位を高め、世人から、今あなたの仰しやるように多少でも蔑視されるようなことのないように、今のあん摩さんと昔のあん摩さんでは違うのだというようにするについては、やはりこういうように中学校を出た者、聾唖学校を出た者であつて、その上に試驗で学校に入るのでありますから、余程地位が高まるのであります。
ですから、あなたのいうような慰安あん摩ということは、今後新たに設けるということは許されない。
今後は地位を高める。
但し、現在ある者だけはこれを許してやつて、既得権を尊重するという、こういう意味でありますからして、これは別に弊害はないと思います。


○小林勝馬君

大体私、申上げるのは、分りましたが、次に第十三條でございますが、諮問委員会の構成については、重大なる関心を持つ者でございますが、特に委員の選任の方法とか、任期等について、何ら謳つてないようでございますが、政府の御所信を承りたいのでございます。
 それから一昨日の委員会におきましても、いろいろ議論が出たのでございますが、この名称の問題で、先程出ました床屋さんが理容師になつて、鍼灸、マッサージの治療をやつておる者が、いわゆる営業法案というふうになつておる。
同じ厚生省で御提案になるものにおきまして、かように違つておるところに御所見を承わりたいと思います。


○政府委員(東龍太郎君)

委員会の構成並びに任期等についてのお尋に対しましては、任期は政令で定めることに相成りますが、大体二年くらいを考えております。
委員会の構成につきましては、その專門の業界の方々、それから医師の方々、それからいわゆる学識経驗者という中で、都道府縣の当局の方等も交えまして、大体三つの……。


○小林勝馬君

それは條文に戴つておりますから分つておりますけれども、選定の方法です。


○政府委員(東龍太郎君)

この選定の方法につきましては、まだ具体的の方法に確定的なものを持つておりません。
各方面の御意見を十分に聽取いたしまして、定める積りでおります。
殊に地方の委員の選定につきましては、中央の委員会において十分詮議いたす積りでおります。


○國務大臣(一松定吉君)

名称のことですが、これは今あなたの仰しやるように、床屋を理容師、髮結いを美容師という名前変えた。
これは非常にいいことであります。
これはあん摩、はり、きゆう、柔道整復と言うことを、若し良い言葉があれば、変えることは惡いと言うのではありません。
だからあん摩を摩擦師とか、或いははりを鍼灸師、きゆうを灸術師、柔道整復を接骨師と変えることはいいけれども、そういうふうに変えると、世人は変えたということは分るが、あん摩、マッサージを摩擦師と言うことになると非常にまあ分らんようになる。
ですからあん摩という下に先生の師を付けてあん摩師、或いははり師、きゆう師、柔道整復師というふうに取敢えずしておるのであります。

 柔道整復師のことは、衆議院でも、接骨師というふうに何故しないかという御意見があつて、私も、議会がさように修正すれば反対はせんということを言つたのであります。
こういうようなふうに名称等が、今あなたの仰しやるように人から軽蔑されるような言葉を使いたくないということを、厚生大臣もあなたと同じように考えました。
何分御審議の余裕がないものでありますから、次の國会でもいい名称をお考になつて、我々に知識をかして頂くか、若しくは改正案をお出し頂けば、決してこの名前を固執するのではないということを一つ御了承賜りたい。


○政府委員(東龍太郎君)

法案の名称が師が附いたもので営業法案となつておることは御質疑の通りでありますが、これにつきましては全体のこれらのものが、いずれも営業取締規則の効力の失効いたしますのを一應法律によつて補うというところにスタートがありますので、今までありました通りの表題を使つておるものと御了承を願いたいのであります。
それ以外に、別に何も深い含みがあるわけではございません。


○小林勝馬君

大体よく分りましたが十三條の点につきましては、再教育、講習その他規格の選定などに重大なる問題がございますので、早急に決定されるようにお願いしたいと思います。
そうして尚業者の方もお取入れになるというお話でございますが、業者の御意見も取入れるようにお願いいたします。

 第十一條の施術所の問題につきましては、戰災地とか、現在の資材難その他の関係もございますから、この点を是非とも御考慮に入れて頂きたいと、かように存じます。

 それから今の名称の問題につきましては、只今申上げるようにいろいろございまして、尚変更の余地がなかつたという御意見でございますが、鍼灸の、はり、きゆうは四ケ年の修業に対しまして、あん摩は二ケ年の修業にしていて、程度の低い者が一番先に謳われて、程度の高い者があとになつておるということに、なんだか変だと私共現実に感ずるのであります。
今一般的に言われておるのは、はり、きゆう、あん摩ならまだ通るのでございますが、あん摩、はり、きゆうというのは一般に通つておりません。
この点も御考慮にあずかりたいと思います。


○政府委員(東龍太郎君)

今最後の、順序の問題でありますが、これも他意があるわけじやございませんので、法令の番号の順預に並べたわけでありまして、終りの方が眞打ちと申しますから、あとの方がいいのかも知れませんが、決してそういう特別の意味があるわけじやございません。


○安達良助君

第五條に関しまして一言質問いたします。
このあん摩、それから柔道整復師は、医師の同意を得た場合以外には、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならんということになつておりますが、但書において、應急の手当をする場合はこの限りでないということは、これは事実問題といたしまして、脱臼、骨折、或いは捻挫の場合におきましては、一般人はすぐさま骨接ぎ、通称骨接ぎといいますが、その方面に駈けつけ、或いは医師の一部の方も、さように指導をしておる今日におきまして、なぜここに但書を附けて、そうしてそういうことを謳つたか、その点をお伺いしたいことと、それから脱臼並びに骨折の患部に施術をするということと、それから整復師が手当をすること、それからこれらの脱臼、骨折に対する施術をするということは、大体においてその内容が同樣であるが故に、非常にここに矛盾をきたす虞れがあるのじやないかということを考えられる点がありますので、この二点につきましてお伺いしたいと存じます。
尚又医師の同意がなければ、その施術をしてはいかんということになつておるが、そのことについて医師にかかつた場合、整復師に若し医師の同意を得ないで行なつた場合に、どういうふうな処置を執るかということについてもお伺いしたいと存じます。


○國務大臣(一松定吉君)

第一の問題からお答えいたしますが、但書をあなたの仰しやつたように取つて除けてしまうとどうなるか、但書がなかつたならば、医師の同意を得た場合は、脱臼又は骨折の患部の施術をすることができるが、医師の同意を得なかつた場合には、絶対できんということになる。
同意を得なかつたならば、但書がなかつたならば……。
そうするとここに急な患者が一人やつてきた。
但し、これは應急の手当をしなければならんけれども、医師の同意が得られないからできんということになつたら、放つたらかしてしまうということになると、折角應急の手当をすることによつて危害を逃れるとか、或いは回復ができるとかいうのに、できないことになるのでありますから、但書を設けて、應急の手当をするというような場合には、医師の同意を得なくてもよろしいと、こうして除外例を設けておる。
これが一つ。
それから医師の同意を得なければ脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならんということは原則なんです。
なぜかというに、柔道整復師というものは、医師の施術に対して補助的の施術である。
だからして医師の同意を得ずに勝手にこれをやるということは認められないということでありますので、医師の同意がなければやれんのだと制限をした。
然らば医師の同意を得ればできるかというと、できる。
そうすると医業をすることになるのじやないかという、そういう場合があるのでございます。
或田舍の医者の所に行つたところが、それは眼科医である。
或いは産科医である。
その近所十里四方に医者がないというような所に行つた。
ところが医者は、どうも私はできんが、あなたの方で取敢えずこれだけのことをやつて下さい。
やることが患者のためにいいのだということで、医師が同意を與えるというようなときに、この法文があることによつてそれができるわけです。
要はこの五條を設けたというのは、應急処置のできるように、医者がむしろ自分がやるより柔道整復師をしてやらした方がこの患者のためには幸福であり、目的を達することがよろしいのだということを医師自身が認定したときには、これをやらせることができる。
但し柔道整復師は、自分が勝手に医師の同意を得んでやることは絶対に許さんし、並びにこれがいわゆる医業に対する補助的の仕事であるということが、この五條によつて明かになつたのだということを御了承を願いたいのであります。


○草葉隆圓君

この法案はいろいろな意味からいわゆる大衆保健とか、或いは関係して直接当つておる業者が、大衆的立場の方々が又多数である関係から、いろいろ社会的に一つの大きな注目を惹いておる問題だと存じます。
併し幸いに厚生当局の大変熱心な御努力によりまして、誠に相当立派なものが提案されたと存じまして、この御苦心に対しましては衷心より感謝を申上げる次第であるまするが、提案理由の御説なり、又條文等をよく熟読いたしますと、相当疑問の点がありまするから、この機会に御質問申上げて置きたいと存じます。
名称の点につきましては、だんだんとお話がありましたが、私はむしろ小林委員とは違つた意味において、マッサージは從來は四年であり、あん摩は二年であるという法的の違いがあつたところに、マッサージとあん摩との違いがあつたと認められますが、今回は学校教育法の四十七條による入学資格を限定せられました意味においても、マッサージが二年になつても実力を衰えない。
むしろあん摩というものが向上したと存じますから、從つてあん摩とマッサージとを同等に取扱われましたので、從來のあん摩という名前をマッサージという名前に変える方が妥当ではないか。
つまり「マッサージを含む。」というのを、逆にマッサージとして、「あん摩を含む」という取扱い方の方が妥当ではないか。
むしろあん摩という方が古い文学的な存在の氣がいたしますのでありますから、その点についての御所見を伺いたいと存ずるのであります。
もう一つ廣い意味からいろいろそういう意味も加わつて、このあん摩というものは從來から、恐らく日本にありました社会政策の、古い時代からの、旧幕時代からの唯一つの社会立法的な取扱い方、考え方を持たれてあん摩に対する取締りというものは行われておつたと思う。
恐らく世界各國の中において社会立法的なものがあるという点におきましては、あん摩に対する或いは旧幕、或いは從來の取扱い方が最も社会政策的な立場を持つた立法として、我々は誇り得ておつたかも知れないのです。
で今度のこの法案は、そういう意味において相当社会政策的な意味も強く織り込んで然るべきものではないかと思いまするが、むしろ純理的な立場を多くとられて、社会政策的な立場が法案の内容は割に少いのではないか、これはむしろ現在の内閣の性格から言つても、もつと社会政策的の内容を法案自体が持つような行き方をとるべきではないか。
こういう考であります。
その点についての御所見を伺いたいと存じます。
それからもう一つは、今日は文部省からの御出席を求めておりましたが、今局長が見えておつたそうでありますけれども、何かの都合で間違つてお帰りになつたそうですから、幸い関係の方がお見えになつているそうでございますので……それでは若しや御答弁が差支ありましたら、次の機会に御答弁を願いたいと思います。

 或いは厚生省関係において御了解願える点は御答弁をお願い申上げたいと存じますのは、この法案によりますと、第二條によつて、從來の公に認定された学校というものが、相当内容を規制されて來る。
特に從來の盲学校、或いは府縣立の盲学校等におきましては、その殆ど大部分が盲人の、あん摩、はり、きゆうというものを取扱つている。
今度公に認定された学校という意味においての、從來のこれらの盲学校等をどういうふうに改組して、そうしてこの法案に即應するような一種の養成施設としての役割をなさしめるかということが一つ、それからもう一つは、本年度の卒業生に対しては、こういう取扱いをされるかということが一つと、それからもう一つは、現在、在学しておりまする学生生徒というものが、或いは、ここに言うておりまするこの法案のそれぞれの学年に当つて嵌まるような考え方でお取扱い願えるかどうかというのが一つ、この点を伺いたいのであります。
それからこれも先にちよつと他の委員から御質問がありましたが、一般の養成施設を卒業した者、一般の養成施設というものは、從來から考えますると、相当いろいろな意味において、或いは十分でないものもありはしないか。
ただ籍だけを置いて、というような場合もあろうと存じまするから、先程大体の養成施設というものについての一應の御見解はありましたが、その点について、もう少し具体的に、これこれの程度のものは養成施設として認めるというようなことがありましたら、その点を伺いたいと存じております。
もう一つは、時間がありませんので、一遍に固めて御質問申上げたいと存じますが、第三條の第四項の、これは條文としてはこの通りであろうと存じますが、一体これをどうして取締り、どうして発見をするかという問題であります。
それから第八條の、医師の團体がこれこれの指示に関して意見を述べる。都道府縣知事が衞生上害がある虞れがあると思つた時には、これに対して委員会の意見をとり、又それに対して一方は医師会が指示を出す。
そうすると委員会と医師の團体との意見或いは指示というものは、実際具体的な問題になるというと、どういう形になつて現われて來るか。
ここでの医師の團体が、前項の指示をするという意味の点を飼いたいのであります。

 それからこの全体の條文を見ておりますると、十二條にありまするように、医業類似行爲はこれを認めない。
業としてはをらない。
これでもはつきりいたしているわけであります。
はつきりいたしておりまするが、從つてこの法案は「等」という字は要らんのじやないか。
恐らく「等」というのは類似行爲を指したのじやないか。
この十二條の医業類似行爲は業としてはならない。
原則的にはつきりしておりまするから、「等」という字は要らないと同時に、附則の中において、第十九條に引き続き三箇月以上、現在医業類似行爲を業としている者で、そうして施行日から、仮にこれが二月一日としますと、三箇月以内にそれぞれの手続をした者は、届け出をした者は、昭和三十年の十二月一日までは医業類似行爲はできる。
三箇月以上、第一條に掲げるものを除く外、医業類似行爲を業としているということは誰が認定するか。
本人の届け出だけで認定を認めるか、こういう問題、從つて若しや本人の届け出だけであるといかがわしいと仮に考えられるものが、この機会に続続届け出していいじやないか。
私はしておりましたということが言えるのであります。
そうすると何によつて認定し、何によつて証明ずけてやれるかという問題、これを三箇月以内に届け出したらいい。
而もそうしたものは昭和三十年の十二月一日まででありますから、相当期間が長いのであります。
八年間という長さがありますが、昭和三十年までという意味はどういう点に根拠があるだろうかということをお伺いいたしたいのであります。

 もう一つは、これは一番最初の第一條でございますが、業とする者はこの取締を受ける。
業とする者という意味は、いわゆる一戸を構えてそれぞれしている者も、そこに一緒に雇われながら働いている者も、そこで手傳をしながら学校等に通つて一方助手をしている者も、そういうものを含む意味か、この点をお伺いいたします。


○國務大臣(一松定吉君)

私の答えるところだけ私が答えまして、他は政府委員からお答えさせます。
第一にこの法案は社会政策的な事項の規定が少い。
こういう御批評でありますが、私はこれほど社会政策的な法案はないと考えております。
この点につきましては、こういうような非科学的なことはやめさせちやえというような考えを持つている者もないとも限りません。
併しながら我が國におけるあん摩とか、はりとか、きゆうとか、柔道整復というものは、多年の間民間にそれらのことが行われておつて、これによつて生活を営んでいる方が全國に数万人の人がある。
これが直ちに今非科学的だという理論だけで廃めるのはどうであろう。
かように私共は考えましたので、実はこれらの点について業界の方に集まつて頂いて、それらの人の御意見を聽いて成るほど尤もだと、既得権はやはり尊重しなければならんなという意味で、関係方面の御了解を得て出してよかろうということになつたから出したので、そういう建前から見ますれば、これほど社会政策的に、これらの人の失業者を生ぜんようにして、既得権を認めた。
これほど社会政策的の立法はないと思つておる。
但しこの中において、今少しそういうような意味を加味するがいいではないかという御意見ならば、全然同感であります。
但し会期切迫のときに、こういうものを出しましたがために、今御指摘のように不完全なところがございましよう。
それはゆるゆる次の國会で御訂正を賜れば、喜んで應ずるという用意があるということを御了承願つて、その点に対するお許しを願いたいのであります。

 それからマツサージを主にしてあん摩を次にしたらいいじやないかという、これも一つの考え方から、そういうふうに言い得ましようが、政府の考えましたあん摩は、全國的に用いられて、そういう言葉を使つたのであつて、マツサージというと山間僻地に行きますと、食べものか(笑声)飲むものか、体をさするものか分らない。
併しあん摩というとよく分つておる。
それで世間一般用いることを先にして、文明的のマツサージはあん摩のうちに含むことにした方が、常識的にした方がいいじやないかという、そういう点で御了承をお願いいたしたい。
 次に「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等」という「等」という字は、書かんでもいいじやないかというお話でありますが、これは書かんでもいいのでありますが、併しながら日本語としてはこういうふうにいくつか重ねたときには、一つの書き方として「等」を入れることは、日本の文法によくあることでありまして、あつても法律的の権利に関するものでないから、その点を御了承賜りたいのであります。

 それから業権ということは、それを繰返して行うて生活の糧を得る。
この繰返して行うことが業である。
唯一遍やつたことが業でないという法律解釈でそうなつておりますから、御了承を賜りたい。
併しながら先生の下におつて夜は学校へ行くが、晝は先生と一緒にやる。
それはやはり業である。
生活の資料を得るからである。唯独立しておるとか、別箇であるとか、又は寄寓であるとかいう意味ではありません。
それから業は正式の届出をしなければ業でない。
内証でことことやつておるのは業でない。
ですから業をしておる者が施行の日から三ケ月内に届けよということは、一應整理するためにこういう法案を拵えたのであつて、仕事はやつておつたのでありまするということを申出るのが、それが即ち三ケ月で、その後の三ケ月合計六ケ月で、これは認める、認めんということを決めるために、こういう手続を要求したのでありまして、許しを受けておらんで内証でやつておつたものが、三ケ月やつておつたから、俺は三ケ月やつておつたと、それで届出てそれで直ぐ資格を與えるものでないと御了承願いたい。

 それから十九條の八年間、こういう沢山認めるのは、長過ぎるのではないかというお話でありますが、業者の方からもつと長くやつてくれるといい。
立場々々で意見が分れるのでありますが、この辺ならば大概八年間と切れば、業をしておる者も、これは俺はいつまでもやつておつても、先の望みがないから、轉業を考えようと、八年も長く考えたら轉業の道もあろうし、その間には試驗を受けて、他の方面に轉業することもあろうというので、八年にしたのでこの点を御了承を賜りたいのであります。あとのことは政府委員から御答弁申上げます。


○政府委員(東龍太郎君)

学校の問題についてでありますが、学校の内容は、この法案に基きましても、相当整備せられなければなりません。
この点につきましては、既に文部省の関係局課とも打合せを開始いたしております。
文部省の十分なる了解を得て実はこの法案と相成りましたわけであります。
一番問題になります本年度の卒業生をどうするか。このことにつきましては、私共も最も心を傷める点でありまして、この法律の文面からいたしますと、それらの方々はこの法律に規定する、資格を得ません限りは直ちには業につけないことになるのであります。
いろいろと実は苦心をいたしております。
昨日衆議院の委員会におきましては、厚生大臣から政治的考慮を要する点であるというお答をしておりますが、まさにその通りでございます。
目下私共といたしまして、非合法的ならざる限りの手段の考えております。
文部省ともこれは十分なる打合せをいたしまして、來年の三月に卒業いたします人々をして失望の淵に陷れないように、最善の努力をいたしておりますことを申上げておきます。

 それから養成施設の規格、いろいろ世の中にはそれらしからざる施設もあるというお話でありますが、この新らしい制度によります養成施設に対しましては、その施設、即ち校舍でありますとか、いろいろな教材でありますとか、或いは教員の数、質等につきましても、然るべき標準、規格と申しますか、標準を定めて、それに適合するもの以上でなければ認定をしない。
公認をしないということにいたしたいと存じております。
その設備内容等の具体的の問題となれば、これはこれから定めますそれらの学校における教科内容とおのずから関聯を持つものでありまして、それらの教育を完全に施行し得るに足るだけのものであることが明らかにならなければ認定しないのでございます。

 それからこの医師團体の意見云々に関するお尋ねでありまするが、これは医師團体が前項の指示に関して、都道府縣知事に意見を述べることができるというのであります。
医師團体といたしましては、医師、医業の立場からして、然るべき意見を述べまして、それが適当に参酌せられることによつて誤まらざる指示が都道府縣から出されるというわけでございます。


○草葉隆圓君

私はいわゆる一種の徒弟であつて、生活を得ておるのではないけれども、勉強のために先生のところから、盲学校に通つて、その余暇に手傳つておるものは、生活と称して、同じことを繰返して生活のために当つておると解釈せずに、勉強のためにやつておると解釈して差支ないのでありますか。
かように考えて念のために申上げるわけであります。
その点を伺いたい。

 もう一つは、只今お話になつたように、政治的解決により非合法的ならざる限りにおいて本年度盲学校卒業生に対して、これこれの資格を考えるということは結局相当そういう道を考えながら本年度卒業者には本法による処置を講じて頂けるという親心を我々はその儘受取つておいて間違いないのでしよう。
こういうことを申上げる。
それからもう一つこの第十九條の問題は、これは私ども実はこれもほかのもう一遍裏から考えて、厚生省当局は將來医業類似行爲を法文化されるというお考はないのか。
つまり昭和三十年までやつておつて、その際には惡い者もあろう。
良い者もあろうから、良い者だけ取つて、法文化して認めて行こうというのじやないのならば、昭和三十年は長過ぎて、むしろもつと短くていいのじやないか。
若し又そういう意味でおやりになるのならこれで結構だ。
こういう点を伺う。
同時に三ケ月以上同條に掲げてあつた行爲をやつておる。
医業類似行爲を業としておると、それが発布後三ケ月以内に届け出すというのですから、届け出すというのは、業としてはおるけれども、正業の業としておらないから届け出そうというので、これは今の厚生大臣のお話とは違うと思うのでございます。
これで初めて届けを出す。
これによつて届けを出した者は、せいぜい昭和三十年までは認めて行こう。
こういうお考えでありますから、その含みとして医業類似行爲を四百何種もあるのを整理して、正しい者だけをなにか法律を作つてやつて行くという、その間の含みをお持ちになつてお考になつてやつておるのか、そうじやなしに、この第十二條にある通りなことを今後おやりになるならば、昭和三十年は長過ぎやしないか。
こういうわけなんであります。


○國務大臣(一松定吉君)

先生のところにおつて夜学に通つて、その間に先生のところから出てあん摩をやる。
或いははりをやるというようなことはこれはいけないです。
ただ先生の補助で、もうそれが彼が独立してやることができるなら、それは資格がなくてやるのですから、これはいけないのです。
ただ先生がずつとやつておるが、今日は先生が差支があつて行けん。
お前行つてつかんでおれということで、ちよつとつかんでおるところへ先生が來て、今度は代つて先生がやるというのならいいが、先生だけ出ておるところへ代つて行つて責任を以てやるということは、いわゆる免許なしでやるのですから、それはいけない。
その方は、ですからそれで一つ御了承を願いたい。

 それから卒業者の方でありますが、これは政治的解決ということを今ここで責任を負つてこうする、ああするのだということは言えないけれども、結局もう四ケ月すれば卒業するのだ。
ところが三ケ月前に届け出なきやならんということにすると、その資格を得るためにはもう一ケ月遅くなければ得られん。
あと一ケ月遅くないと資格が得られん。
それをどうするかということは、文部大臣ともよく相談して、一ケ月早く卒業させたらどうかということも行けるのですから、そういう意味を以て親心でやろう。
これは私共の考では成るたけ助けてやろう。
そういう考ですから、そういうことで一つ御了承を賜わりたい。

 それから十九條のことですがね。これは十二條で医業類似行爲を認めないということならば、八年というものは置かない。
ただ療術行爲のうちに、私自身も経驗があるのですが、例えば指圧だとか、或いはカシセントーとか、或いは紅療法というようなものは、これはどうかすると効果があります。
非常に頭がぐたぐたして、撤夜なんかしたりしたときには、揉み療治をやるとちよつと癒るとか、或いは神経痛で困つておるときには、指圧療法をやると一時は癒るが又翌日には元通りになるということもある。
医学上説明のできるようなことになつて、正式にこれは医業の一つとして認められるというようなものは、必らずしもないじやないが、でありまするから、八年の間にそういうところを切瑳琢磨して、非科学的でないということが明らかになれば、又これも法案としてこれを法制化するということもできましようし、八年経つても結局非科学的で、これはもう医業行爲の一部とは到底認められんというものは、自然消滅するのですから、そういう意味において八年間の余裕を置いて、そういうものの研究もできるだろうし、適者生存で一向役に立たんことは自然消滅するだろうという含みのあるものですから、十二條において断じて禁じてしまうということならこの経過法は要らん。
そういうわけです。


○草葉隆圓君

もう一つだけ……大体承知いたしました。
殊に本年度の盲唖学校の卒業生及び現在の在学生等につきましては、一つ愼重にお願いいたします。
それから委員会の編成なり内容につきましても、先程小林委員からも縷々お話がありましたが、我々はこれも府縣にも大変影響が多いことでありますから、十分これが資格等の御通牒に当つては、府縣におきまして十分やれるように御考慮を願いたい。殊にこの鍼灸マッサージというようなものは、盲人が約七割以上やつておるから、そういう方面についての盲人関係において十分指導し得るような方法も特に御考慮を願いたい。
これだけ申上げます。


○姫井伊介君

第八條に「衞生上」とありますが、これは衣食住と違いまして療術ですから、私は健康上といつた方がこの性質にぴつたり來るのではないかと思います。
この点を一つ。
次には医師又は免許者の名によつて非免許者が代行する者が往々ありますが、これの取締りはどういうふうにされますか。
尚この前の説明で淫祀邪教云々のことがありましたが、やはり加持祈祷、宗教的の一つの精神療法のみならず、お水を飲むとか、お札をいただくとか、或いはそれを煎じて飲むということがありますが、これらはその取締りのうちに入りますかどうか、若しこれも禁止すべきものだとなりますならば、どういうふうな方法をおとりになりますか。
その次は厚生大臣がお話になりました指圧問題でありますが、今日は指圧療法が昔よりも余程医学的に研究され進歩されて、整体操法といつたような名前をつけまして、相当科学的に説明がされ、体制づけられるようになつたようでありますが、その点から考えまして医療整復或いはあん摩といつたような、今日の科学性に比べまして別に遜色はない。
又資格につきましては相当高い資格の下にこういうことをやつて行くことに十分な用意もあるということを聞くのであります。
そういたしますならば、やはり医者の治療の補助的手段といたしまして、柔道整復などと比べまして、決して遜色はないと思いますが、これをお加えになりまする御意思はないか。
ないかと言へばないと言われるでしようが、私は加わるべきものではないかと考えるのであります。
以上お伺いします。


○國務大臣(一松定吉君)

八條の衞生上と健康上は專門でありませんから、これは政府委員からお答えいたします。
ただお水を飲ませるとか、御供物をいただかせるというような宗教的に病を治すというようなやり方はどうだ。
これは医業類似行爲か、そういうようなことはですね、いわゆる淫祀邪教であつて、そういうようなことは警察犯処罰令で取締つておる。
但しその水を飲ませることが、本当に保健衞生上病氣を治すに適当だというようなことが研究の結果認められるということになれば、これは別ですが、今日の程度においては長い間神樣にお供えしておつた。
ほんとうに「ぼうふら」が泳いでいるような水を飲めば、健康上よくないことはこれは当然の話だ。
さようなことは今警察犯処罰令で取締つておるのですから、そういうような点は、私は医業類似行爲と認めません。
併しながらあなたの仰しやる指圧というようなもの、これは私実際二週間やつて貰つたが、一時効きます。
これは医術行爲としてはよいと思うけれども、併し今日の程度ではまだ私どもはこれを公然と認めて、この十二條のような規定を設けん方がよいという程度には至つていないような思いますから、これはお説のように段々進歩発達いたしました結果、これはもう医療行爲として立派なものだということになれば、この八年間の間に、勿論この法案の中に入れることもできましようし、若しくはこの法案よりして医術としてもよいことになりましようから、それは経過を見た上で、一つ適当な処置をとるということがよろしいと思うのであります。
どうぞさよう御了承賜はりたいと思います。


○政府委員(東龍太郎君)

第八條の「衞生上害を生ずる」という言葉でありまするが、この解釈は衞生、即ち公衆衞生上という積りでございまして、健康ということよりも尚一層廣く解釈して頂きたいと存ずるのであります。

 それから代行の問題でございますが、これは言うまでもなく許されることではございません。
先程大臣からまだ見習中の者についての業云々のお答もござしました通りでありますが、いわゆる看板を借りて、羊頭を掲げて狗肉を賣るに類するような、資格のないものがこれをやることは、当然これは取締らなければならない問題でございます。
さようなことが法案の中に含まれておりませんが、これは当然許されないことと承知いたしております。


○小杉イ子君

私は盲唖学校を視察いたしましてから考え出したのでございますが、私は整骨施術者で、目明きや片輪でそういうことをやつておる者を沢山知つておる。
それで如何に触覚の強い盲人でありましても、骨折、脱臼だけの患者ばかりを扱うことはなかろうと思います。
その点におきまして盲人でないことを希望しております。
それからあん摩、はり、きゆう営業者として、今度公認の学校、養成所を卒業した者に、都道府縣知事が資格を與えることになることは、時代の然らしむることと思います。
私がここで痛切に感じますことは、これに対して政府の規定よりも……規則は別といたしまして、学校長、養成所の校長なり職員がこれならば確実に資格が得られる者だという者でなければならんというのでございます。
その理由は人一倍苦心をして学校を卒業はしましたが、資格が得られなかつたという時になりましてから、その盲人が急に、それならば運轉手に変ろうか、給仕になろうかということが絶対にできないという点でございます。
ここで痛切に、切実に私は学校長に思つて貰わなければならん。
そうして用意といたしましては、一年なり二年なり折角かかりましたけれども、触覚も鈍いしということが分りましたならば、一日も早く音樂の方なり、又はあん摩專門なり、こう決めてやるという注意をして頂かなければならんと思うのでございます。
この法文の進みを見ますというと、特に今後は目明きの治療術者でございますが、この人達もこの規定によりますれば、これを同じ盲者達のあん摩治療の方にも入れるわけにもなりますから、資格が與えられることになりますならば、尚更盲人にとつては、その苦心の程が察せられるのでございます。
これを政府ではなく、その資格者に私は希望するのでございます。


○政府委員(東龍太郎君)

御質問の中の一つ、重要な点と存じますが、折角学校を卒業しても免許を得られないというような場合には、非常に不幸なことになるのではないかということでございましたが、これはこの法案の一つの骨子でありますものが、教育の程度を高めるというところにあることを先程申上げましたが、從つて教育を受けて、そうしてその学校長が卒業生として立派に世の中に送り出しますような人は、この免許の試驗を受けましても、当然通るということを私共は予想しておるのであります。
然らざる者を卒業させられるならば、これは学校長の責任であると思うのでありまして、免許を受けられる程度まで学校において教育を願いたい。
要は免許を與える與えないでなくて、資格のある人を養成することが主眼でございますので、その御心配は恐らく不要であろうと思います。


○小杉イ子君

有難うございました。


○千田正君

議事進行を願います。


○中山壽彦君

大分、先般來委員の方方から御質問がありましたので、私申上げることは少いんですが、一、二お尋ねして置きたいと思います。
第二條に学校の問題が出ておりますが、今後新たに盲人ではり、きゆう、マッサージ等を業とせんとする者は非常に困難な、むずかしいことになるんではなかろうか。先般文教委員会におきましても、盲人の義務教育の充実ということについての問題が出ております。
文部当局からは、これは非常に特殊な人であるから、これを完備するには長時日を要するという御答弁を私共も聽いておるのでありまして、從つて今後新たに盲人にしてこういうものの免許を得るということは、非常に困難であるということに了承して置いてよろしいのでありますが、これを先ず伺います。
それから第八條の中に「医師の團体」ということがありますが、この「医師の團体」ということは、医訪会ということを意味しておるのでありますか。
若し医師会というのならば医師会とはつきり明記された方がよいのではなかろうか、こういうふうに考えます。
第十條に、「都道府縣知事は、施術者から必要な報告を提出させ、」ということがありますが、「必要な報告」という、この「報告」というのは、どういう内容を意味しておるのか、これをお尋ねしたいと思います。
第十二條と十九條の関係につきましては、草葉委員から詳しくお話になりまして、私共もこの既得権を八ケ年認めるということについては長きに失するのではないか。
こういう考えを実は持つておるのでありますが、今大臣の仰せられたように、科学的、非科学的な区別をすることにして、このくらいの年数が経たなければ分らんじやないかというようなお話もありますが、全体科学的とか非科学的とか、良いとか惡いとかいう判定の基礎ということは、この八年くらいでできるかどうかということに非常に疑問を持つております。
すでに厚生当局の方では、五、六年前からそういうようなことのために特殊の医者が研究に当つておるのでありますけれども、今日まだその結論に到達しておりません。
これらの点につきましては、尚私はもう少し研究の余地があるのではなかろうか。
こういうふうに考えております。これらの点について御当局の御答弁を願いたいと思います。


○國務大臣(一松定吉君)

十二條、十九條のところだけ私お答えいたします。
後は政府委員の方からお答えすると思います。
今の八年というのは科学的、非科学的を見分けるために要する時間というのではない。
そういうこともその中において一部含むというのでありまして、八年間延ばしたというのは、これらの業者をして直ちに失業せしめるということは氣の毒である。
或意味における既得権、それを尊重して上げよう。
但しその中に、自分らのやつておることが、これはどうしても医術として認めて貰わなければならんというようなことで、その業務に從事しておる人が熱心に研究の結果、非常に効果を認められて、そうしてこれは勿論一つの立派な医術行爲であるというようなことになれば、政府としてはそういうようなことは直ちに取入れることもできるから、研究の方面から見ても八年くらいは相当だろう。
こういうこと、それと今の既得権ということと失業ということ睨み合せて、まあまあこの程度がよかろうということで八年というものを決めたのであります。
先刻も申しましたように、直ぐには、法意はない。
ただ政治的に考えたのでありますが、もともとあなたのお考のように科学的、非科学的の見分けをすることは八年じや短かいというようなことになるとすれば、必要に應じてその時その時によつて、八年が短かければその時に至つて延期の法案もできるのでありますが、取敢えず今日では、まあこのくらいが相当であろう。
こういう意味で八年ということに決めたのでありますから、どうかその点は一つさよう御了承を賜りたいのであります。後は政府委員に……。


○政府委員(東龍太郎君)

第一の盲人の教育機関の問題でありまするが、これは確かに御質問の通りであると存じます。
実施の問題といたしましては漸進的と申しますか、成るべく困難の程度が急激に参りませんように、既設のものにつきましては、漸進的な方法でこれらの養成機関を整備して参りたいというつもりでおるのであります。

 それから医師の團体という文字でありまするが、成る程、主としてこれは医師会を考えております。
併し医師会のみという限定をするまでには至つておりませんのと、もう一つは、現状におきまして医師会という文字で現さるべきものが、法的には存在していないということもありますので、特に医師の團体という言葉を使つたのでありますが、精神は、主たるものは医師会でございます。
それから必要なる報告を提出させるだけでは、というお話でありますが、必要なる報告と申しますものは、実は相当廣汎な内容を考えておりますので、患者数とか、或いは治療の場合でありますと治療内容とか、或いは又報酬とか、そういうようないろいろな事柄についての報告を提出させる。
尚実際吏員の臨檢のことまでも入れておりますので、それによつて十分なる監督をして行こうというつもりでおります。


○服部教一君

私はこの法案を見まして、急ぐものはこれを通して上げんというと困ると思うのですけれども、新たに加えたような、こういう重大なもの、例えば第十九條のごときものをこの際慌てて……まだまだ私は質問したいことが沢山ある。
そういうことを慌ててこの中に加えずに、十二月中になくなつて困るようなものだけにして、そんなものは必要があつたら来年でも又ゆつくりと議論して、この会期の迫つたときにやらん方がよかろうと私は思うのです。
そこで私は質問するのですが、何故にこういう行詰つて、二、三日内にやらなければならんというようなものを、ここに來てこういうものをお加えになつたか、その理由と、それから三ケ月以内に届ける。
日本全國に三ケ月以内にこんな法律が出たということがわかるでしようか。
それだからこれはやはり一年以内とか、もう少し皆に周知のできるように、田舍に至るまで周知のできるようにしてやらんというと、もう三ケ月以上経つてしまつた。
こういうようなことになつては非常に迷惑をすると思うから、殊に目下國民の中には多数食うことに、生活に困つておる者があつて、これらのことで食べておる者も沢山あるのですから、こういう狹い期間に、三ケ月以内に届けなければ、その後は無効だというような、そういうあらあらしいことをせずに、もつと時日の……、今日適当なことにして、それを書くにしても三ケ月以内というようなことでなしに、一年とかいうようにされた方がよかろうと思うのですが、何故にそういうような迫つた、三ケ月というようなことをお書きになつたのか、その点をお聽きしたい。
これは、この質問は、申すまでもないことでありますけれども、我々は法案に反対せんがために反対しておるのじやありませんから、それはよくなかつた、それは間違つたというて、よくわかるようにして貰わんと、いつまでも質問を繰返さなければならんことになりまするから、それで一つ深切に、お互にこれは相談しておるのですから、よくやつて貰いたいのです。
そこで私の希望は、そんなふうな重大問題が含まれておるような、これはもう世間にそういうことが知れたら、なかなかやかましい問題が起つて來ると思うのです。
この十九條のごときは、そうだからして、そういうことを拔かれた方がいいと思いますが、ここへ入れなければならんという理由を一つ説明して貰いたいと思います。


○國務大臣(一松定吉君)

この十九條は、服部委員はこれはせんでもいいものだというような御意見のようですが、これは取締規則があるのです。
その取締規則がこの十二月三十一日を以て、憲法の規行によつて効力がなくなる。
やはり医療行爲も……、そこでそういうものも成るだけ法律に制定することができるならば制定したい。
こういうのです。
但し先刻私がお答え申上げましたように、漏れるものがないとも限らん。
或いはこれだけの法案を、この短期日に審議のできないようなものがあるかも知れないから、そういうものは來年五月三十一日まで從來の法律の効力を延ばすという、今丁度この委員会に出ておりますが、ああいう法律を特別に出して救済をするということになる。
例えば今仰せのように、その法律を來年五月三十一日まで延ばせばいいじやないかという議論なら、それはわかる。
その代りここに一つこういうことがあるのです。
この療術行爲とかいうようなものは、成るだけこれをさせないように、そういうことにしたい。
然らばどこに一線を劃するか、その一線を劃するということは、法律を施行してから三ケ月内に届をする。
而もその法律施行以前に自分はやつておつたということを、施行の日から三ケ月以内に届をする。
三ケ月といえば九十日であります。
日本全國に新聞もある、ラジオもあるときに、九十日もかかればこういうことになつておるということは、それは自分の身に振り懸る仕事です。
自分が療術行爲をやつておる。
その療術行爲の命があるかないかという重大な法規が、九十日もかかつて自分は知らんのだということは、ちよつと常識として判断ができん。
でありますから法律を施行してから九十日内に届をすればいいのです。
届をすればその三ケ月以後において八年間仕事ができる。
こういうことです。
届をするために三ケ月という猶予期間を與えた。
つまり三ケ月、九十日の猶予期間を與えるということは、相当長いものだと思う。
これを一週間の期間とか一ケ月の期間だとかいえば短いけれども、少くとも九十日の期間において自分の療術行爲をやつておつたということを、自分が知らない……而も自分の業務を失うか失わないかという重大な境遇におかれておる人でありますから、三ケ月あれば、それらの手続ができる。
こういうことで以てこれをやつたのでありますから、さよう御了承を願いたいのであります。


○服部教一君

ちよつと今のことは三ケ月では私は短いと思うのですが、併しそれを繰返して言う必要はなかろうと思うのです。
それから今後出て來る。
これから発明することはどういうふうになるのですか、もうできないのですか、日本國からそういうことを封じてしまうのですか。
そういうことは私は世界にないことで、どういうわけでそういうことのこれからの発明を、今日までやつておつたものは許すが、これからは一切してはいかん、できないというようなふうになりますということは、日本のこれからの発見発明を封鎖することになると思うのでありますが、その点についてのお考を承りたいのであります。


○國務大臣(一松定吉君)

発明大いに結構です。
大いにやつて頂かなければならん。
ただ発明して、それを許可も何も受けんで業として、それを賣物にして、それを生活の資にするということは、これはいけない。
大いに発明をして、自分はこういうふうなことによつて医術を発明したいということで、これを世間に発表して頂いて、それがたしかに権威のあるものであれば、もう喜んで取入れる。
それでありますから、これはそういう、許されも何もしないものを直ちに世間に発表して、そうして、それによつて金銭を得て、生活の資に供するということが、これがいけないというのです。
でありますから、発明をする……この間も言つたのですが、指で患部を差せば病氣が癒るのだということを、科学上発明したとします。
そんな一体魔術みたいなことがあるかと言つて排斥はできない。
果して指を一本患部に差すことによつて、病氣が癒るということが科学上本当に説明することができれば、大発明である。
発明を阻止するということではありませんし、今までやつておつたようなことで、直ちにこれを立派な医術の一つの行爲であるとして、すぐにこれを認めることについては、大いに考慮する必要がある。
故に八年の間余裕を置いて、既得権も認めようし、その間に科学的の研究発明の発表ができるということになれば、続いて認めよう。
但し非科学的の許すことのできないようなものは、八年経つたならば自然消滅してしまうということ、こういう趣旨なんです。


○服部教一君

いまのことでもう一度……。


○藤森眞治君

もう時間も大分長くなりましたようですが、先程來大臣は、本案は完全なものでない。
又改めて、この法案を改めた形で出すと、こういうお話がございましたが、これは第二國会にお出しになるというおつもりでございましようか。
殊にこれは政府の提案としてお出しになるのでありますか。
若し政府の方からお出しになるものといたしまして、尚この法案がここで可決されるものといたしました場合に、第十九條の昭和三十年とあるこの八年間は、若しこの法案が通りまして、又改めて提案されるときに、これを既得権とお認めになりましようか。
如何でありましようか。

○國務大臣(一松定吉君)


これは政府が、自分が出しながら、自分が不完全というのは甚だ恐縮ですが、完全な法案ではないではないかという御非難がありますから、そういう專門的の立場立場から御観察願えれば完全とは言えますまい。
ただ政府は、今日はこの程度において一つ御審議を頂きたいという意味でありますから、次の議会に、この点を少しこう直したらいいじやないか。
これはこういうものを入れたらいいじやないかということになりますれば、その時において、更に政府も考えましようし、又これらの業者の方から政府の参考になるいろいろの資料を出して頂きまして、そうしてこれらを檢討して、成る程これはいかんから訂正しようと思えば、政府も訂正いたしますし、政府は國民の公僕という立場から、國民の御意思は何処までも尊重してやるという、こういう立場で一つ御了承を願いたい。
只今これを通過したら政府はもうやらんのだということはありません。
併し業者もこれで大体よかろうということであれば、又次の議会に修正案を出すということは考えておりませんが、これはその時々によつて、皆さんの御意思を尊重して行動するのだということを一つ御了承を賜りたいのであります。


○藤森眞治君

それから八ケ年の既得権というものが認められるかということを申上げましたが……。


○國務大臣(一松定吉君)

これは八ケ年ということを特権と申しませんが、これが若し事実上、八ケ年が短いから十ケ年にしようじやないかと言えば十ケ年、五年がいいというなら五年、その特権というものは、法律が認めているから特権であるが、その特権を法律の力によつて剥奪することは自由ですから、これはその時の皆さんの御意思によつて如何樣にも法律は改正できます。


○千田正君

大分御答弁も伺いましたし、我々もよく御質問いたしました。
これで打切り採決に入つて頂きたいと思います。


○委員長(塚本重藏君)

大体千田委員の質疑打切りに御賛成の方が多数あるようでありますか……。


○委員長(塚本重藏君)

今、服部さんが尚質問があるようでありますから、もう一つ、服部さんにもう一回お許しを願いたいと思います。


○服部教一君

第十九條ですが、医療師を業とすることはできないということは、これまでも出た法令の中にあるのですか。
今度初めてですか。


○國務大臣(一松定吉君)

そういうものは、今まであつた。
取締規則はある。
省令がある。
その取締規則が、今度十二月三十一日になるとなくなる。
そこでどうするかということで、この十九條というものが生れ出たわけです。
それまでは特別に禁じておるという禁止規定は勿論なかつたのですけれども、何となく各縣々々によつて、或いは認めたものもあり、認めないものもあるという、種々雜多になつておる。
だからそれを今まで医療行爲として認められておつたものは、今度八年間は認めてやろうとこういう規定なんです。


○服部教一君

そうするとやはり法律としては初めてなんですね。


○國務大臣(一松定吉君)

取締規程としてはあつたのですが、それが今度効力がなくなるから、この十九條があるのです。


○服部教一君

これまでなかつたものを、どうしてお入れになつたのです。


○國務大臣(一松定吉君)

取締規則はあつたのです。


○服部教一君

取締規則はあつても、法律でどうしてこういうものを。


○國務大臣(一松定吉君)

それは今まで法律じやない。
規則です。
今度は憲法ではそういうような命令とか規則とかいうものはいけない。
法律で決めよということが憲法の規定でありますから、そこで法律を制定するために法律案を出したのです。
省令で出せないのです。
憲法の規定から、今まで出しておつた命令というものは、皆法律に直さなければならない。
法律に直さないものはなくなつてしまうのです。


○服部教一君

そうすると、さきにお話になりました金さえ取らなければやはり研究はやつてもいいことになつておるのですか。


○國務大臣(一松定吉君)

それは業務でないからよいのです。
研究することはよいのです。
金を取つて生活の資料を得ることが業務です。
ただ一件だとか、或いは金を取らんで自分で研究しておるということは業務でないから、これはよろしいのです。


○委員長(塚本重藏君)

他に御質疑はありませんか……。
それでは本法案に対しまする御質疑は終了したものと認めて差支ありませんか。


○委員長(塚本重藏君)

御異議ないものと認めます。ちよつと速記を止めて。


○委員長(塚本重藏君)

それでは速記を始めて。
それではあん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法案、理容師法案、栄養士法案、食品衞生法案、以上四案を一括して議題に供します。四案の討論に入ります。


○姫井伊介君

討論を省略して、直ちに採決せられんことを望みます。


○服部教一君

私は討論を省略することは反対です。
長いことは申上げません。
やはりこういう大きな問題を僅かの委員の人で、私が今申しますのはあん摩の方です。
他のものはよろしい。
こういう日本全國の多くの人が反対しておるような、このような問題を僅かな委員で、ここでそれをいいということにすることには、私は反対です。
これは皆にこういうことが知れれば、皆はやはりこんなものは賛成しないと思いますから、十九條の如きものは省けば賛成します。
省かない限りは私は反対です。


○委員長(塚本重藏君)

速記を止めて。


○委員長(塚本重藏君)

速記を始めて。

○草葉隆圓君


あん摩、はり、きゆう、峠道整復等営業法案につきまして、この法案の内容については、厚生当局の御苦労と御盡力とを吏心より感謝申上げますが、ただ尚二、三点の問題について、相当愼重に取扱うべき問題もあろうと存じます。
その一つとして十九條の問題はいろいろな意味におきまして、今後檢討すべき余地があろうと存じまするが、併しここで修正をし、かれこれしておりますと、会期等の関係で却てこちらの考が無になるような虞れがありますので、今度はこの儘修正をせずに、原案をその儘速かに採決願いまして、他日この問題につきましては、成るべく近い將來に尚一屑完備するように、政府御当局に御願を申上げまして、討論を打切つて戴きたいと思います。


○河崎ナツ君

ちよつと他のことは皆賛成ですが、食品衞生法案、あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法案につきましては、無論賛成でございますが、この法案に関係して來る問題で、二つ希望條項を附加えて置きたいのです。
それは厚生省に対して、附加えて置きたい。
一つは先程中山委員が仰しやいましたように、学校制度になりますと、これからの盲人が一人前になるのはなかなか困難でありますが、それでもやはり是非とも盲人の方にこういう途が開かれるように社会事業の考えからしなければならん大事なことでありますので、その意味で厚生省がこの案を出すにつきまして、第二條の制限をします限りは、文部省に交渉願いたい。
今はあん摩さんの学校が少い。
私拜見しましたが、盲人の学校は私立学校が七十校ぐらいでございます。
五千人ぐらいの生徒さんがございます。
大抵今まで学校に行つております者といつたら、相当上級の人でなければ、費用もかかりますし、又他の人が連れて行つたりしなければならませんし、遠くにありますから、寄宿舍がありませんとそう行かれません。
それで大部分の人は弟子入りして、封建的なあの徒弟制度の、弟子入りしてあん摩さんになつておるであります。
それができなくなり、どうしても学校を通らなければならない。
そうすると今の学校では少いし、今府縣立に一校ありますが、縣の者が皆あそこに行くということはなかなかできませんし、これはどうしても学校の制度を通す限りにおきましては、盲人のためにもつと学校を沢山数を殖やすとか、いろいろ便宜を図つて上げるような方法をどうか文部省に、この法律の第二條の制限をします限りは、文部省に一つ厚生省からも、そういう要求を出して頂きたい。

 それからもう一つは、この間やはり盲学校を拜見して、しみじみ考えさせられた。
それ以来胸一杯になつておるのでありますが、根本におきまして、これは厚生省、殊に厚生大臣がいつか仰しやつていらつしやいました言葉もございますので、あん摩さん、目の惡い人、そういう子供を母親が産まなくて済むように……、その目の惡い人のできます根本の原因はいろいろございますけれども、大部分は淋病並びに先天性徽毒とか、ああいう性病、他にもございますけれども、性病から來るのがずい分パーセンテイージが多い。
少くとも四十割以上でございますから……。
私は汽車の中でそういうところから産れた目の明かない子供を抱いておる母親が、恥かしそうに隠しておる。
その母親を見て、汽車の中で本当に涙をこぼしたのでありますけれども、どうか盲人がなくなるような法案としての……、いつか厚生大臣が仰しやつていらつしやいました性病撲滅法案等を是非厚生省で出して、そうして本当に盲人が困らんようにして頂きたい。
この二つのことを、これは希望條件としてお考え下さいますことを附加えまして、無論賛成でございます。


○國務大臣(米窪滿亮君)

只今河崎委員の御希望は、勿論私ども賛成であります。
これ等の盲唖学校の卒業生に対して資格を付與するというような問題は、この四十七條の後段の、監督廳の定めるところにより、これを同等以上の学力があると認められたものとする。
こういう意味のうまい文もある、例えば卒業せんでも、三年の現在ならば、これは卒業したと同一程度のものと認めるということを認定すればできるでしよう。
今のような政治解決はよく承知しました。それから盲の子供を生まんということは、勿論私どもの生命でございます。


○河崎ナツ君

根本をどうか……。


○委員長(塚本重藏君)

討論は終結したものと見て差支ありませんか。


○委員長(塚本重藏君)

討論は終結したものと認めます。
これより採決に移りますが、先ず最初に服部委員長提出の「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法案」中、第十九條を削除するとの修正案が提出せられました。
この修正案に賛成の方の起立を求めます。


○委員長(塚本重藏君)

少数であります。
少数を以て否決いたします。

 四案共に原案に賛成の方の御起立を願います。


○委員長(塚本重藏君)

多数でございます。
多数を以て原案通り可決することにいたしました。
尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、予め多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において、本法案の内容、本委員会における質疑應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認を願うことに御異議ござ慎いませんか。


○委員長(塚本重藏君)

御異議ないものと認めます。

 それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することになつておりまするから、本案を可とせられた方は、順次御署名を願います。


○委員長(塚本重藏君)

御署名漏れないものと認めます。

 この機会に御挨拶申上げます。
重要な、我が國に取りまして、歴史上最も重大なる、いろいろな方面において意義を持つております第一國会に、御同樣末席を汚すことを得まして、しかもこの我々の立場から考えまして、感激を以てこの厚生常任委員となることができたのでありますが、しかもこの長い期間、五月二十日以來今日まで実に長期に亘りまする國会でありましたが、この間におきまして、いろいろな重要な法案を審議いたすことがございました。
この間委員各位には長い間、非常なる精励恪勤遊ばされまして、法案を多数可決、御協賛、御賛同下さいましたことを厚く感謝申上げる次第であります。
私、委員長といたしまして、甚だ不馴れでありました。
なにかとそのことのために皆樣にいろいろな御迷惑を掛けたり、却て法案の審議を澁滯せしめたるようなことなきにしも非ずと思います。
この間、皆さんにいろいろ御不礼のことがなかつたことも保し難いと思います。
にも拘わず皆樣非常に寛容な態度を以てお許し下さいまして、大過なく今日この第一國会におけるこの委員会の最後を見るに至つたことは、私自身にとりまして誠に感激に堪えません。
又一方國会職員の方々におかれましても、長期に亘つて、人少く、人手不足のために非常な御苦心を遊ばしたことに対しましても感謝する次第であります。
長い間の御審議を謝しまして、簡單に委員長としての御礼の言葉といたします。

 これを以て散会いたします。

   午後五時三十六分散会

 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事      谷口弥三郎君
   委員
           河崎 ナツ君
           中平常太郎君
           草葉 隆圓君
           中山 壽彦君
           安達 良助君
           小林 勝馬君
           藤森 眞治君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
           波田野林一君
           服部 教一君
           姫井 伊介君
           米倉 龍也君
           千田  正君
  國務大臣
   厚 生 大 臣 一松 定吉君
  政府委員
   厚生政務次官  金光 義邦君
   厚生政務官
   (公衆保險局
   長)      三木 行治君
   厚 生 技 官
   (医務局長)  東 龍太郎君
  説明員
   厚 生 技 官
   (医務局次長) 久下 勝次君


あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法公布

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