Breath Therapy Guide ぷらば
この「ブレスセラピー・ガイド」は、以前プル&ぷらばが主催した「ブレスセラピー・ワークショップ」(現在は行っていません)の参加者用に作ったものです。
この「ガイド」には具体的なセラピーの方法等は記載してありませんので、直接的に何かの参考になるとは思いませんが、それでも、呼吸や感情その他の理解に繋がると思います。
実際、ぼくの按摩治療の中では、このブレスセラピーの経験が確実に役立っています。
身体エネルギーのみならず、感情エネルギーや意識状態の体験的理解は”治療”にとどまらず”生”そのものの理解を深めてくれました。
実際にセラピーを受けてみたい方は、サニヤスネットワーク等で調べてみるのがよいかも知れません。
ブレス・セラピーで大切なことは、あくまでも体験し、探検し、味わい、観ていくことであり、決して考えることでも正しくやることでもありません。
人それぞれ体験することは違うでしょうし、誰の体験が正しいとかどの体験が素晴らしいとかいうこともありません。
もしかしたら今までの自分にとって『間違っている』ことをやったり感じたりするかもしれませんが、そういう自分を観て気づいて受け入れていくプロセスが大切です。
誰かをケアする時や、初めてのカタルシスや未知のエネルギーに出会った時にちょっとしたヒントがあればとても助けになると思います。
そんな風に、もしこの小さなガイドが役立ったら、とてもうれしいです。
1.パートナーを組む †
パートナーを組んで、一人が横たわりもう一人がケアしてあげる場合、横たわった人はケアしてくれる人を信頼し、起こってくる感情や動き、感覚(ふるえ、しびれや痛みなど)が起こるにまかせる。
- ケアする
ケアする人は、横になっている人の脇に優しく座り、相手をハートで感じる。
『存在していること』が一番大切なことである。
相手の呼吸を見ながら、眠ったり逃げたり漂ったりせぬ様に、相手が『ここにいる』ことを助ける。
往々にして、エネルギーが高まって何かが起きようとする直前に、マインドが逃げようとしてあらゆるゲーム(眠る、スペース・アウト、呼吸停止、体の緊張など)を始める。
それに気付いた時は、指、つま先、耳たぶを触ったり軽くゆすったり、呼吸を意識する様に声をかけてあげたりする。
- さわる
さわる時は、赤ちゃんに触れるように愛をこめて優くさわり、手から相手を感じるようにする。
動く時はゆっくりと優雅に。
- 話を聞く
話す人も聞く人も一緒に目をつぶり、向かい合って座る。
まず自分自身のハートを感じ、呼吸を入れてゆく。
自分のハートを充分味わって、次にハートに呼吸をし続けながら、目をつぶったまま相手のハートを感じて味わう。
それから目をあけて、相手の目を愛情をこめて見つめる。
話す人はハートから話し始め、聞く人は批判や判断をせず(頭を使わず)にハートで相手を感じながら聞く。
- 始める前に
ケアする人は、自分自身に戻る時間を充分取る。
自分のセンターにいるようにし、体をリラックスさせ呼吸をゆるめる。
自分のムードに気付き、それが何であっても受け入れる。
- 始まってから
ケアする人は、相手の呼吸のパターン、速度、深さ、リズム、呼気と吸気のバランスを見る。また、吐く息で相手がリラックスしていっているかどうかもチェックする。
2.投影と受容 †
投影の中で生きている自分に気づき、受け入れる。
- 投影
人は、自分の中にあるものを無意識のまま外部(他人や社会など)に投影し、外部を通して生きようとしているので、どこで誰とどの様に生きていても、自分の内部の質を投影し続けている限り同じことが繰り返される。
たとえぱ、自分の中の善悪を他人に投影しているが、これは自分のエネルギーを無駄に他人に渡してしまうことである。
これに気づき全ての投影を取り戻すことは、他人にあげてしまったエネルギーを自分に引き戻し、再続合することである。
また、自分の貴任を取ることでもある。
そうすると、信じられない程の量のエネルギーが自分に還ってくる。
肯定的で良いイメージの投影(あの人は美しい、優しい、素敵だ…など)をしている時に受け入れることは比較的簡単だ。
なぜなら、実は自分の中にある素晴らしいものを他人に投影しているのだと気づくことだからだ。
それに比べると否定的投影(あの人は意地悪だ、嫉妬深い、図々しい…など)を引き戻していくことは難しい。
しかし、両方とも同じ様に大切であり、自分自身の全体性を取り戻すことにつながっていく。もし、誰かの人格の一部を否定している時は、自分自身の一部も同じ様に否定していることに気づく。
- 受容
判断を超え、あるがままを見て、何も否定することなく、かと言って深刻にならずに、受け入れていく。
ある意味で、瞑想中に起こる状態である。
ブレス・セラピーで、他人をケアしている時、自分の投影に気付き、パートナーやグループのメンバー、部屋やリーダーなどに対する投影を自分に引き戻していくことは、楽しいし助けになる。
3.カタルシス †
抑圧されたエネルギーが開放されること。
素晴らしい体験だが、しばしぱ自分自身から逃げようとするマインドが偽のカタルシスを作り出す。
本当のカタルシスにはセンターがあり、深い呼吸をともなう。
もし吐く息が止まっていたら、その人は自分自身とのコンタクトをしていない。
4.アウェアネス †
ブレス・セラピーで一番大切なことは、カタルシスでもエネルギーの表現でもなく、アウェアネス(気づき)である。
アウェアネスが起こる前には大抵カタルシスが起きるが、呼吸している人が自分の感覚や感情に気づいているかどうかが重要である。
もしカタルシスをしている内に無意識に陥ってしまったら、意識を呼吸に戻さなければならない。
5.ブロック †
抑圧されたエネルギーが体にブロックを作り出す。
ブレス・セラビーでは、呼吸することによってこのブロックに働きかけていく。
ブロックに触れた時、動いたり声で表現したりパートナーにマッサージをしてもらったりすることで開放できるが、ブロックを見ようとせずに逃れようとしてもがいたり暴れたりすることがよくある。
このようにブロックが強い場合は、パートナーがその場所を手で優しく、だがしっかりと固定してあげると、ブロックを強烈に意識することができ、ブロックを開放する助けになる。
- ブロックの溶解
パートナーによって固定されたブロックをダムのイメージでとらえて、エネルギーを海のイメージでとらえると、呼吸によってエネルギーが増加し海は満ちていき、やがて津波のようにあふれ出し、ダムはこわれ始めていく。
…と言うより、とけていくという感じに近い。
リラックスが起きた時にこれを感じることが多い。
とても静かに起こるため、何も起こらなかったかの様に感じるかもしれないが、これも素晴らしい体験である。
6.呼吸による意識の変化 †
呼吸することにより、生命力(プラーナ、気など)を得るが、肉体だけでなくエネルギーの源泉にも届く。
呼吸は、普通マインドのコントロールの下にあり、哀しみや怒り、痛みなどを感じない様に浅くなっているが、このため人は喜びや幸福すら感じるのを恐れる様になっている。
セラピーでは、マインドのコントロールをはずし、本来の呼吸を取り戻していく。
普段の私達は、さまざまな抑圧や恐れのために鎧の中でおそるおそる呼吸しているような状態なので、たまたま呼吸が何か深いものに触れたとしても、エネルギーの源泉まで届かない。
ブレス・セラピー中に、いつもと違った感覚や感情が湧いてきた時は、未知に対する恐れのために、初めは表現を抑えてしまうことが多いが、呼吸によってエネルギーが高まっているので、抑え込まれたエネルギーが痛みや怒りとなってあらわれ、カタルシスへと導かれてゆく。
- カタルシス
呼吸が鎧をこわしていく。
大量のエネルギーがカタルシスによって開放され、鎧はもろくなっていく。
カタルシスのあと、呼吸はゆっくりになり、リラックスする。
初めてセラピーを受けた時に比べて、次のセラピーではカタルシスが簡単に起こるが、以前よりもカタルシスに対する恐れが減るからである。
もしかすると、ある時期カタルシスの魅力にとりつかれてしまうかもしれない。
カタルシスのあと、深い心地良いリラックス状態になるが、そこに到るためには必ずカタルシスをしなければならないとか、カタルシスなしでは自分の中で何も変わらないとか思い込んでしまうからだが、もしカタルシスなしで自分を開いていけるのであれぱ、カタルシスは必要のないことである。
起きれぱ起きたで良いが、起こらないといっても問題はない。
セラビーを続けていくと、ブロックはどんどんもろくなり、鎧は絹のように柔らかく薄くなり、感じやすくなる。
呼吸は自由になり、赤ん坊のように深くなる。
戦いが消え、呼吸が優しくなり、呼吸することそれ自体が生きる喜びとなる。
- 呼吸の三つの局面
- (1)閉じている No-Breathing
- (2)半分開いている Yes, but-Breathing
- (3)全部開いている Yes-Breathing
(1)から(3)へと、体の外側(筋肉や骨)と内側(横隔膜)を使いながら進んでいく。
7.呼吸のイメージ †
呼吸には様々なイメージがある。
イメージを使ってワークすることは有効だが、カタルシスやブロックの溶解については別の場所にあるので、ここでは生と死のイメージとエネルギー統合の為のイメージを紹介しておく。
- 生と死のリズム
呼吸には、吸う息(吸気)と吐<息(呼気)の二つの流れのほかに、息を吸ってから吐き始めるまでの吸気と呼気のキャップ(間隙)と、呼気と吸気の間のギャップがある。
吸気は生命であり、呼気は死である。このイメージを使うと呼吸をするたびに小さな生涯を経験することができる。
しかし、呼気と吸気の間にあるギャップは、吸っているのでもなく吐いているのでもなく、生でも死でもない瞬間であり、この静けさを味わうことは生と死を超えた何かを垣間見ることなのだ。
- エネルギーを統合する呼吸のイメージ
息を吸うと身体が拡がるのを感じ、それと同じように自分の存在も広がっていき、エネルギーで満たされてゆく。これはエネルギーを食べて自分の中に取り入れる感じに近い。
吐くことは、身体が限りなくリラックスしていって、エネルギーが統合されていくことであり、エネルギーを消化し栄養にしていくことである。
8.Yes-Breathing †
呼吸が全部開いている時の感覚はたとえぱ次の様なものである。
リラックス、信頼、無努力、エクスタシー、エネルギーに溝ちている、自由、光に満ちている、直観的、無時間、深いスペース、簡単、子供のようである、ただ起こる、官能的、ハートに満ちている、セクシュアル、オーガズミック…など。
9.Yes, but-Breathing †
呼吸が半分開いている状態。
手放しで全部開くのがこわいので、ストレスの多い呼吸に逃げてしまう。
いくつか例をあげておく。
- タイプ1
吐く息が強くて柔らかさがない。
見ていて抑圧を感じる。
吐く息も吸う息も緊張している呼吸などは、何でも正しくやろうとする人に多く、悲しみや涙、激しい怒りなどが無意識から湧き上がってこないようにしている。
- タイプ2
セラピーを受け慣れている場合、自己一同化している自分のパターンにはまって呼吸するので、カタルシス、再誕生、子供に還るなどを、自ら起こして(起こるのではない)しまう。
- タイプ3
呼吸を止める。
また、セラピーを受けに来ているにも関わらず、普段の呼吸をする。
10.観る †
固定した自己認識をはずしていくためには、『観る』ことが大切である。
自分のスペースに立ち戻り、常に何が起きているか感じようとする。