26-衆-社会労働委員会-52号 昭和32年05月16日

○受田委員
 私は国民医療行政上の問題点について、不言だけごく簡単でけっこうですから、大臣に所信を表明していただきたいと思います。
おととしの二十二国会で、団民医療上に影響のあるあん摩師、はり師、きゅう師、柔道整復師等のいわゆる医業類似行為の関係者に対する法案の改正がされたのでございますが、その中には昭和五年の警視庁令の取締規則で認められた、いわゆる医業類似行為の中の指圧とか、電気、光線あるいは温熱、刺激等の業務に従事しておる人々が、当時八年間延長された業務をもう二年延ばすという規定が定められました。
ところがその規定を定める際に、国会でいろいろ論議されたのでございますが、現に国家が認めておる仕事を長年にわたってやっておられる、しかもまじめに国民保健上に害がないと認められているものに対しては、これは三年の期間のうちに何とかその措置をとって、あんま師になることのできないような立場の人に対しても、道を開くべきでないかということになりまして、この法案通過の際に、附帯決議として

「医業類似行為に関しては、政府は引き続きその業態を把握、検討の上左記事項に関し適当なる措置を講ずべきである。」
その附帯決議の第一項は、
「第十九条第一項の規定による届出をしたる既存業者」
すなわち先ほど申し上げました医業類似行為者の中で、正規の手続を経て長年にわたって社会的に業務を続けておる人で、
「本法に認められない者については猶予期間中に充分な指導を行い、国民保健上弊害のない者については、その業務の継続ができるよう適切な措置を速かに講ずること。
第二が、
「あん摩師等のうち身体障害者については、本法運営上その業態に支障なからしむるよう万全の措置を講ずること。」
第三は、
「無免許あん摩その他これに類する者に対する取締を厳にし、その根絶を糊すること。」

という附帯決議を付して、国会はこの法案を通過せしめたのでございます。

当時の情勢は、長期にわたって国家が認めた、社会的に有害でない立場で認められている人人、それを国法で禁止するというのは、憲法上の業権の剥奪であり、生存権の剥奪であるという意味から、この法案を通す立場上政府の顔は一応立てるが、実際の取扱いにおいては附帯決議の趣旨を十分考慮して措置をすべしという、全会一致自由民主党、社会党あげてこれに賛意を表して附帯決議を付したのでございます。
この国会の附帯決議によるところの「第十九条第一項の規定による届出をしたる既存業者」、まじめに業務を長期にわたってやっているのを国が認めておるその業者で、期限がきてやめなければならぬという立場の人に対して、「本法に認められない者については」ということは、本法で認められない、たとえば年をとって試験を受けることもできない、あん摩師に転換することは自分の信念としてできないというようなまじめな人に対しては、猶予期間中に適切な指導を行い、国民保健上弊害のないものについて、その業務の継続ができるよう適切な措置をせよと国会で意思決定をしたのでございますが、この意思決定に対して、大臣はこれを十分尊重する方針をもって今臨んでおられますかどうですか。

○神田国務大臣
 今受田委員のお尋ねになりましたことは、きわめてこれは重要なことでございまして、同時に、この対策を政府が今日までとっておらなかったということについて、私も実は率直に申し上げましてはなはだ遺憾に存ずる次第でございます。
そこで今までのことはいたし方ないといたしまして、今後の対策に対する所見を述べろということでございますが、厚生省といたしましては、この附帯決議は十分尊重いたしまして、その趣旨に沿うような配慮をいたしたい。
すなわちもっと具体的に申し上げますと、今までいろいろな事情でその附帯決議の趣旨が一つも実行されておらないようでございますから、これから一つ実行をはかる、またそのやり方によりましては、あるいはもう一ぺん法案の改正等もお願いしなければならないというような事態もあろうかと思います。
いずれにいたしましても至急この附帯決議の趣旨に沿うような対策を立てまして善処いたして参りたい、かように考えております。
これははっきりと一つお答え申し上げまして、そういう方向を早く打ち出して、附帯決議の趣旨に沿う、こういうことでございますので、御了承願いたいと思います。

○野澤委員
 関連して。
今、重ねて法律の改正もしなければならぬという意味は、ただその猶予期間を延ばすような改正の意味なんですか、それとも療術行為の実態に即して、既存の業者の既得権を認めようというお考えなんですか、この一点をお聞かせ願いたいと思います。

○神田国務大臣
 その両方とも考えなければならぬのじゃないかと思っております。
延長しなくても解決できるようなら延長する必要はございません。
相当議論もあるようでございますし、私は率直に申し上げましてあの附帯決議は真に尊重しなければならない、こういう考え方でございますので、その最善を期したい、そういう意味におきましてはっきりお答え申し上げておいた方がいいのではないか、こういう意味でございますので、両方の意味を合せて考えておる、こういうふうに考えていただきたいと思います。

○野澤委員
 簡単ですからもう一点。
なおあんまの試験を受けなければならないということで、各府県の状況を見ますと、実は講習をやるについても二十万も二十五万も金がかかるのですが、その費用の出場所が全然ないのです。
これに対して厚生省はおそらく予算を請求して成立しなかったと思うのですが、全くこれは厚生省の手落ちだと思うのです。
これらの点に関しましても至急対策を講ずるなり、あるいはまた予算もとれてない、講習もやってない、試験も受けてない、だから法律の内容を変えてもよろしいのだ、こういう進歩的な考え方で既存の業者のめんどうを見ようというお考えならばそれでけっこうでありますが、いずれにしましても予算措置というものは厳重に大臣の方から監督すべきじゃないか、こういう感じがいたします。

○神田国務大臣
 ただいまのお説の通りでございまして、そういうものすべて含めて最善を期したい所存でございます。

○受田委員
 これは昨年の暮れの北国新聞に出ていた記事でございますが、「“生業が絶たれる”」と首つり二人の娘を抱えた女電気治療師という見出しで、この法律の猶予期間中に転業しなければならぬという不安を持って、長期にわたって、娘二人をかかえてまじめにやっていた電気治療師がついに夫の死後に首つりをしたという事件があるわけであります。
こうした不幸な事件が起っていることを考えまして、長期にわたってまじめに業務を続けた人々に対して、政府がその業務の継続について誠意を持って積極約に努力されることを今お約束いただいたわけでありますが、大臣におかれましては、どうか具体的にこの附帯決議の線を実施に移すことに御努力をいただくことをお願い申し上げておきます。

○藤本委員長
 午後三時まで休憩いたします。

   午後一時二十三分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時十五分開議

 
 
 

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