2-衆-厚生委員会-5号 昭和23年06月02日~


   ……略……

○山崎委員長

御異議なしと認めます。
それではさよう決定いたします。

 これより請願の審査に入ります。
日程第二、療術師法制定に関する請願、文書表第四四号、日程第二〇療術師法制定の請願、文書表第六三九号、及び日程第二四療術業在続の請願、文書表第七四八号の審査に入ります。紹介議員内海安吉君。


○内海安吉君

この問題は武田委員の提出されたものと同一案でありますので、一括してその理由を御説明申し上げます。

 現在わが國におきまして、療病保健を業とするものには、医師、あんま、鍼灸、柔道、整復、療術の四種があります。
そのうち前三者は法律をもつて業務が保障されているにもかかわらず、療術は昨年末國会を通過いたしまして、昨年一月一日から施行せられましたあんまその他の営業法によつて禁止せられることになりました。
当局は療術の禁止理由といたしまして、
第一に、療術業者は医学的知識が低い、
第二には、療術はその業種が四百余種もあつて、法制化することはむずかしい
というような二点をあげているのでありますが、從來療術は、民間療法の名のもとに、日本独特の療病保健法として研究発達したものでありまして、無害であつて有効なるもののみが各地方廳の取締令下に認許されていたのであります。
すなわち有害なるものは取締によつて禁止せられ、無効なるものは大衆に批判によつて自然消滅しておつたのであります。
眞に無害にして有効なるもののみが存続してきたのであります。
從つて昭和七、八年以來、請願または建議により、國会においても療術師法制定とその保護助長が約束されてまいりました。
その一例を申しますならば、第七十六帝國議会におきましても、西尾末廣氏の質問に対し、政府委員一松定吉氏は、療術を保護助長したいという御意見については、私もあなたと同感であります、と答弁されたのを見ても明らかであります。
かくのごとく旧法制下においてさえ、保護助長の趣旨が認められておりまして、民主主義憲法下においては、療術は一層尊重さるべきものと全國十万の業者が、旱天に雲霓を望むがごとく、保護助長の法規の成立を期待しておつたのであります。
ところが突如として新しい法律によりまして、今後の新規開業を許さないのみか、昭和三十年限り禁止せられることになつたのであります。
いわば從來の業者の既得権というものを剥奪せられるのみか、憲法第二十五條によつて保障せられたるわれわれの生活権を拒否するものと言わなければなりません。
しかも今回の政府措置の理由を承りますと、その調査資料は昭和十四年ごろの宗教的な加持であるとかあるいは呪誼、祈祷であるというような一切の行為を包含したものを療術とみなし、その業種四百余種と算定したのでありまして、その根底において誤解があり、誤算があることは申すまでもありません。
この新法律制定の最大の理由として、過去二十数年間にわたり、社会民衆のために奉仕してまいりましたところの科学的療法をも抹殺されることになつたのは、まことに遺憾にたえない次第なのであります。
現在わが全國療術協同組合に加入せる業種の届出名稱は多種であつても、その実体は左の二類七種に分類されることになつております。
第一類は手の技術であります。
手肢、指圧療法、整体療法第二類は電氣療法等のいわゆる機械類によつてやるところの療法でありまして、光線療法、磁氣療法、温熱療法、刺戟療法、こういつたようなものでありまして、当局の言われる業種多樣にして法制化することが困難であるという説明には首肯することができないのであります。
從つて昭和二十二年十二月九日全國療術業者大会の席上におきましても、この問題に対して、一松厚生大臣は、療術の効果あることは自分も治療を受けているから認めている。
ただ業者の中には、瓦と金剛石がまじつている。
そこで石を除き、よい石が分類できたならば、新規開業を許すこともやぶさかでないということを申されたのであります。
また昭和二十二年十一月二十日衆議院厚生常任委員会に提出した政府原案、あん摩鍼灸柔道整復療術行為営業法第一項には、療術行為既存業者の既得権を認める。
そして第二項には、昭和三十年まで所定の修習を受けることとあり、療術行為既存業者は右に準じて業務を継続し得るとありました。
しかるにこの政府案が究如変更され、療術業を十杷一束として八箇年の壽命を限り禁止となりましたことは、他の業者が新しい法律によりまして保護され、継続される業権を與えられたのに比べて不公正でありをつたく了解に苦しむところであります。
つきましては憲法第二十五條に基き、全國十万の業者が正しい職業としてのその生活を法律によつて保障してくださるよう謹しんで請願する次第であります。
何とぞ委員会におきましてもこの請願を御了察くださいまして、満場一致御採択あらんことをお願いする次第でございます。


○山崎委員長

政府側の御意見があれば承りたいと存じます。


○久下政府委員

ただいまの御請願に対しまして私から一言政府の意見を申し上げたいと思います。
請願の御趣旨にもありましたように療術行為につきましては、あんま、鍼灸、柔道、整腹術を除きまして、昨年第一回國会を通過した法律によりまして、一應原則的には禁止になつたのでありますが、既得権につきましてはお話の通り、八年間の猶予を認めまして、業務の継続ができることにいたしたのであります。
かようにいたしました趣旨は、ただいま御請願の趣旨にもありましたような理由のみではないのでありまして、むしろ本質的にはこれら一應原則的には禁止になりました療術行為は、今日までのところ、積極的に疾病傷痍の治療に対して有効であるという医学的な認定がなされておらないことに基くのであります。
決して種類が多いから分類が困難であるという理由ではないのでございます。
この法律が制定をせられましてからまだ日も浅いことでありまして、政府といたしましてはこの種の各種療術行為が、積極的に医療上の効果ありと認定を得るまでに基づておらない実情でございます。
当時國会におきまして厚生大臣からも答弁を申し上げておりますように、政府といたしましてはこれら療術行為につきましては、八年間の猶予期間のうちに、十分徹底的に、積極に有効であるという認定がつくようになりましたならば、そのついたものについては、あんま、鍼灸、柔道、整腹術と同樣な扱いをすることは十分考えておるということを申し上げておるのでございまして、今日におきましても同業の考え方をもつて処理しておるつもりでございます。
ただ遺憾ながら今日までのところではそういうことを積極的に認定するまでに基づていないという実情でございます。


○内海安吉君

ただいまの御説明によりますと、医学的に認定はできないというのでありまするが、一体この問題は必ずしも医学的という立場からのみではなく、もつと廣い範囲において、――ただ技術上の問題のみをもつて限定するというところに誤りがあると思うのであります。
しからばもう一度承りたいのですが、認め得るというのは一体具体的にどういうことであるか、それを承りたいと思います。


○久下政府委員

どういうふうにして認めるかというお尋ねでございますが、別にこれらのものを認定するはつきりした認定機関があるわけではないのでありますが、いずれにいたしましても、人間の疾病、傷痍を治療する行為でありまするので、政府が國民に対しまして、この行為ならばほんとうにその標榜するごとく効果があるというような認定に達しなければ、積極的に法律の制定とか、保護するというようなふうに立ち至るべきでないと考えておるのであります。
さような意味合におきましては、すでに各方面に医学の研究機関もございまするし、あるいはまた学会もございまするし、そういうような方面におきましての意見を聽き、その認定に基きまして政府としては決定いたしたいと考えておるのであります。


○内海安吉君

この問題はすでに一松さんが厚生次官あるいは厚生大臣としての答弁もあり、またその前に西尾さんあたりがみずから卒先してこの問題を遂行しなければならないというような、むしろ挙党一致でもつてこの問題を通さなければならぬということは、この議会におきましても前後八回にわたつて請願なり、あるいは建議案なりが通うておるのであります。
それにもかかわらず何らの標準がなく、何とかもつと進んだならばという、漠としたような御答弁をもつてしては、これはほんとうに百年河清を持つようなものであつて、まことにこれは政府の怠慢と言わざるを得ないと私は思う。
少くとも八議会を通じて議会においても満場一致をもつて通つておるにもかかわらず、今なおいかなる方法をもつて、いかなる規定のもとにこの問題を取扱つたならばという標準もつかんでいないで、ただいたずらに医学上の見地からいかぬということならば、私は政府の答弁に満足できないと思う。
この点についてもう一應御説明願いたいと思う。

 議会の前後八回にもわたる決議に対して安閑としておつて、それで政府の責任は足るものであるかどうか、それを承りたい。


○久下政府委員

お尋ねのような大きな問題につきましては、私からお答えすべき性質のものでないと思いますが、一松厚生大臣のお話が出たようでありますが、御引例になりました保護助長すると明言したということは、いつのことでありましたか、私も記憶ございません。
少くとも第一回國会におきまして、この法案の御質問に対して一松厚生大臣がお答えいたしましたのは、私が先ほど申し上げたことと全然同一のことを申し上げておるはずでございます。


○榊原(亨)委員

ただいまの請願につきましては、療術師の側におきましては多大の熱望をもつて、早く療術師法を制定されることを望んでおるのでございまして、殊にこの療術行為の中には、ただいま政府委員がおつしやられましたところの医学的の根拠をもつものも多数あるのでございまして、その点はあんま、鍼灸と同じようなものもたくさんあるのでございますから、この際政府におきましては、速やかに療術行為に対するところの調査委員会というようなものを設けられまして、科学的にこれを証明し得るものにつきましては、八年間の猶予期間を待たずして、速やかに療術師法を制定されまして、そして業者が安んじてその業務に服せられるように努力せられんことを望む次第であります。


○田中(松)委員

私あるいは政府委員のお言葉をちよつと聽き漏らしたかとも思いますけれども、たとえ政府委員がどういう意図をもつておいでになりましても、われわれ國会といたしましては、國会独自の考え方をもつておるものでありまして、政府委員がたとえ医学上納得ができなければ許さないのである、医学上理解できるようになつたらそのときに考えるのである。
こういうようなお考えをおもちになつておつたとしますならば、それは政府だけのお考えであつて、國会といたしましては、それはなるほど今日の医学は進歩いたしたおります。
私ども敬服はいたしておりますけれども、人知の発達というものはきりがないのでございまして、それでもつて万全ということはできません。
たとえば医学的に説明はできなくとも、結果から見ますと、現実にそれでもつて多くの人たちが安い金でもつて利益を得ておる。
いわゆる病氣を治すことができておる。
そういうような事実がいくつもある。
そういうものを私どもはただ業者の口から聽いただけで納得するわけにはいきませんけれども、たとえば公開の席上で、こういう病氣はこういう治療をすればこういう結果が出てくる。
そういうようなことを万人の目で見る公開の席上で実驗をする。
しかもどういうわけでそういう結果が出るかはわからぬけれども、結果として実際こういういい結果が出てきた。
そういうような結論を見出すことができたならば、國会は國会独自の立場で、政府の意図がいかがであろうとも、私どもはこの問題に対しては、別途の立場から立法府の権威のもとに別な考え方をもつものである。
これは厚生委員会全体の意見ではありませんけれども、もし政府委員の方でそういう意味ではなかつたということであつたならば失礼にあたりますけれども、私が聽き取つたような意味であつたならば、厚生委員会の中にはこういう意見もあるということをを一つお含みを願つておきたいと思うのであります。


○武田委員

この療術の問題は、今のように日本人の國民生活が窮迫しておりますし、そして健康状態は低下しておる。
みんな理想的に言うならば完全な医療の要求をもつておりますけれども、そういうところまでなかなかまいりません。
それでいかに國民大衆が療術の方面を安心して受けられるような態勢を猛めておるかと申しますことは、この間私の方にございました報告でも、実際体驗して者がぜひこれを要望しておる。
療術を受けております者が五百万以上だということを私の方に通知しております。
そしてこれは古いことでありますが、昭和十五年の警視廳の発表によりましても、都下の五大新聞に傳えられておりますのは、都下に三千の療術業者がおりまして、患者数は三万人取扱つておると申します。
私の今手もとにございますのは、私の出身地の呉の方でこの二月にまとめてまいりました、療術行為存続の請願に対する治療を受けました者たちの署名であります。
わずかの間に三千四百人以上の者の署名が集まつておりまして、ことごとくこれが療術行為の効果があることを認め、ぜひ現在の状態でりつぱにもつと進んだものにもつていくようにと要求しておるのでございます。
ただいまこれに対して政府の方では、医療上の効果があるという認定を得るに至つていないということが、この療術行為を認めないということの理由にされておるのでございますけれども、しかしこの療術行為は、今までの期間にどういうふうな医療的の効果があつたかといういとは、多くの人の体驗が一番有力に物語るものではないかと思われます。
現在の日本の氣候とか風土とか、そういうものから考えますと、もう私どものようなものは、自身の体驗からも、あるいはロイマチスとか神経痛とか、いわゆる風土病的のものもございます。
それに対してはまだ医療としても正確な治療の方法はないと聞いております。
國民大衆の要望というものを正しい途にもつていくためには、先ほど榊原委員も言われましたように、これに対する一つの調査研究の機図を設けて、そして少くともこれを正しい方へもつていく。
そして今全國の療術界においても、めいめい講習会をしたり、いろいろと研究の機会を多くもつて、この際ぜひこれをさきに出まして鍼灸、あんま、マツサージのあの法律の中に同じようにして、認めてもらいたいということに努力しております。
この際政府の方でもここまでもつていこうという氣持をもつて療術師法の制定ということをお研究願いたいと思います。


○久下政府委員

榊原委員からお話があり、またただいまは武田委員のお話でございますが、実は政府としても昭和十九年から約二年ほど國庫の補助を出して、当時の同愛記念病院内に附設いたしました東亞治療研究所において療術行為の科学的な研究を始めておつたのであります。
ところが戰災に遭つたり、あるいは御某知のようにあの場所が接收されたり、いろいろな事情で、また一方においては予算の要求も承認せられなかつたりというような事情がございまして、この研究が中絶していることを私どもとしてもはなはだ遺憾に思つておりまして、実は予算のつど、ただいまお話のような調査研究をすることに努力してまいつているのでございますが、御趣旨の点もございましたので、なお力を入れて、大いにこの方面の指導、研究には政府としても力を入れてやつていきたいと思つております。


○師岡委員

政府委員の先ほどの御答弁によりますと、積極的な医学的効果を認めることができないということが、大体禁止の理由になつているようでありますが、積極的な医学的効果が上らぬということはどういうことを指すものであるか。
たとえば医学的には何らの効果がないというふうにお考えになるのか、その点を明確に御答弁願いたいと思います。


○久下政府委員

請願の御趣旨の中にもあつたようでありますが、從來の療術行為に対する政府並びに地方廳の取扱いの方針は、療術行為そのものが人体に有害である場合には禁止をいたしますが、害がないという場合には容認をするという態度をとつてきておるのであります。
從つてその療術そのものが積極的に有効であるかどうかという点については、從來の取扱いは少くとも科学的な認定をいたしておらないように理解いたしております。
そういう意味合において申し上げておるのでございまして、先ほど申し上げたごくわずかな期間の研究ではございましたけれども、たとえば指圧療法について研究を始め、その一部の研究報告も私の方に届いておるのであります。
それらを見ても指圧療法は特定の疾病には非常によくきくというようなことは出ておるのであります。
しかしながらその標榜するごとく、すべての疾病にほんとうに有効であるかどうかということを認定するのは困難であります。
なかなか事業としては大きな仕事でありまして、口で申しても簡單にまいらぬ点はございますけれども、私どもとしてはそういうような研究の進むにつれて、小くとも有効と認定された場合には、これを正式に法律で取上げていくようにいたしたいというような考えでおります。


○山崎委員長

御質疑ありませんか。

    ―――――――――――――

   ……略……


 
 
 

hisanoyu dharmaya secondlife

トップ   差分 バックアップ リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS