1-参-厚生委員会-25号 昭和22年11月13日


○委員長(塚本重藏君)

署名漏れはございませんか……署名漏れないものと認めます。

 この機会に厚生大臣から、今社会で可なり問題になつております鍼、灸、按摩、柔道、整復師の資格及び取締に関する事柄に関して所見を開陳したいとの御希望があります。これより許します。


○國務大臣(一松定吉君)

この機会を拜借いたしまして、今委員長の申されましたように柔道、整復術、整復の問題につきまして、一應厚生委員の皆さんに御報告申上げて置くということが適当であろうと考えまするから、極く短時間に私の所見の一端を申上げて、御参考に供したいのであります。
 御承知のごとくこういう取締の規則は、本年の十二月末でこれが廃止せられることになりますので、そういたしますると、これらの取締の規則がなくなるということでありますために、法律を制定しなければなりません。
目下この法案の調査、制定、提出の方法等につきまして、鋭意努力をいたしておりまするから、いずれ近き將來皆樣方の御審議を願わなければなりますまいけれども、その前に私の所見を申上げて置きますることは、先刻これらの問題に対しまする請願が、請願委員会に付託されてございまするから御参考になろうと思いまするので、御靜聽をお願いいたします。

 実はこれらの業者に対しまする既得権は、これは既得権を害することはできませんから、当然これは認める方針であります。
ただ併しながら保健衞生の立場から、從來よりも一層その技術の点について、これを強化する必要があることを痛感をいたしまするから、保健衞生の立場から、これらの既得権者に対しましては、再教育を施しまして、そうしてその技術並びに識見というものを高めてやりたい、こういう考えを持つておりますから、既得権は認めるが、それを同時に再教育をして、これらの人々の技倆の向上を図る。
かような処置を取りたいと思うのであります。
從つてその再教育に若し應じない人に対しましては、これは止むを得ませんから、これらの人に対しましては、資格は自然消減する。
こういうことをいたしますれば、これらの既得権を持つておりまする方々が、進んで再教育に應じまして一層その技術を高め、國民をして安心して手術を受けしめることができると思いますから、そういうような方針で進みたいと考えております。
然らば將來これらの人に対しては、資格を與えるのか與えないのかということに関しましては、將來も試驗によつて資格を與える。
但しその試驗は今までのありふれたような試驗ではなく、もう一層程度を高めた資格試驗をして資格を與える。
これらの方方に対しましては、それらの資格を高め、而も学校を卒業した者に対しましても、國家試驗によつてそれらの技能を十分確めた上で資格を與える、こういうような方針を持つておりますから、さよう一つお含みの上この請願に対しまする御審議をお進め願いたいのであります。

 尚、ここに一言申上げて置きますが、これは私は実は知らなかつたのでありますが、厚生大臣が千五百万円の賄賂を要求したということが、「アカハタ」新聞に出ておるということを聞いて、実はびつくりしたのであります。
そういう記事があるかどうか、一つ見たいものと思つておりましたところが、丁度二、三日前にその「アカハタ」が手に入りまして見ましたところが、鍼灸、按摩の人々が資格がなくなるということに驚いて、そうしてこれが運動のためにとか言つて、千五百万円とか金を集めて、曰く、厚生大臣が民主党に寄附せよということを言われたから、それで集めるのだということであるが、併しながらそういうことには應じられんと言つて、大阪の業者の方では否決の決議をしたということが書いてあるのであります。
私はびつくりしたのであります。
私が今申上げましたように、そういう考えを持つておりますから、業者がわざわざ私に面会に参りましても、運動の必要は少しもない。あなた方の既得権は害しない。併し再教育をして、あなた方の地位の向上をして、將來の人にはもう少し高等の学術を授けて、立派な人にするように努力するという私の意見を聽いて、皆喜んでそれぞれ帰途につくような状況でありますから、これだけのことを一應皆様に申上げて置きます。


○姫井伊介君

今の厚生大臣のお話に、ちよつとお尋ねしたいことがあります。
業者の中に盲人があるのですが、盲人の人の再教育は、実際問題としては相当困難な点もあるかと思いますが、それでも一般の人同様に嚴密なる教育を受けなければ許されないのかどうか。
多少のそこに手加減といいますか、そういうことが考えられないものかどうか、又よし再教育を受けるにいたしましても、特別の経費などが要るといたしまして、あの人たちにそれだけの負担を持たせることはどうであろうか、又一方盲人の人が、特に智能的に発達した人が求めまする自活の職業の中の、この業は最も主なるもの、又最も高いものと考えられておつて、必死となつてそれがために勵みいそしみ、又新らしく技術を覚えんとする者があるのでありますが、これが一般なみに処遇されるといたしますると、そこに非常に大きな悩みがあつて、今もお話がありましたように、もうそうなれば俺たちは絶望だ、むしろ死んだ方がいいんじやないかといつたようなことにまで陷る者がないでもないと思うのであります。
特別な処理、と言つてはどうかと思いまするが、從來とても余り弊害がない、むしろ技術におきましては、或いは一般の人々よりも感が高いだけ、優れた者もおつたわけでありますが、ただ目が見えないために、目から入れるところの教育、生理学とか解剖学とかいろいろなものがありますが、そういうようなものは、目明きの人と同様にはなかなか受けられないのじやないか。目から入らないので、或いは点字にいたしましても、十分にそういうものの説明もできないことがあるのでありますから、この点につきましては、あの不遇なる人々の生活を保障する、目は見えない、暗い世界に住んでおるけれども、心は明るく正しく生活して行かせるという、その見地からいたしまして、何とか考慮が拂われないものでありましようか、この点をお伺いいたします。


○國務大臣(一松定吉君)

実は今あなたの御質問になりました盲人に対しまする鍼灸の問題でありますが、或る方が……外人ですが、復員軍人の盲目の人が鍼をやつておつた実情を見て、非常に危險がつて、これは大変だというようなことで、感想を発表したということを聞いておりますが、そういうことのために、盲人に対しての鍼灸術というようなものはいけないのだというようなことが世間に傳わつて、それから盲人が非常に驚いて、大挙して私に面会に來たというようなことを実は聞いておるのであります。
私は今あなたのおおせになりましたように、盲人が目明きの人と比べて、知識受入れの程度が十分でないというような点に対しましては、必ずしも反対はいたしませんが、併し苟くも保健衞生の立場から人の健康、生命を受持つておりまする業者といたしましては、眼明きでないが故に特別に取扱うことは実に困る。
私の承知しておるところによりますると、この盲人が特に鍼灸などをするという時に、眼明の人に比べて技術が劣るかというと、専門家の話によりますと、非常に触覚が特別に発達しておりまして、そうしていわゆる感、専門の言葉で言えば経穴といいますか、即ち病氣のある場所を発見することが普通の人よりも敏感である。
こう眼をつぶつて、いわゆる経穴……患部をよく探り当て、探り当てた所に鍼を当てるということが非常に優秀だということを実は聞かされておりまして、成る程そういうことがある。
それならば眼が見えんから患部を探すことについては困るかも知れないけれども、触覚ということについては、患部を探つて行つて、そうしてそこに鍼をするということであれば、そんなに危險じやない。
問題は盲人が鍼を刺して、その鍼が体の中に折り込まれはしないかということを素人で憂慮しますが、そういうことはないということを実は聞かされまして非常に実は感激したのであります。
それはそういう域に達することは結局教育のお蔭であります。
そういう意味においていわゆる再教育をして、それらの技術を一層向上せしむるということによつて既得権を認めようという私の考えであるのであります。
故にその既得権者が再教育によつて、その技術が向上するということによつて、それらの人は十分に自分の権利を認められるから、生活のためには困りますまい。ただ問題は將來新たに試驗を受けて、そういうような資格を受けるということについては、盲人は外に適当な仕事を見付け出せんからして、按摩とか鍼とかいうことをやる。
按摩の点につきましては、これはまあ鍼とは違いまするから、ただ問題は鍼なんですが、そういう点に対しましては、やはり盲人であるが故に特別の処置ということは、ちよつと厚生省としては困りますが、どうしても生活がそれによらなければならん、併しながら技術がそこまで発達ができるけれども、特別に取扱はなければ資格が取れんというような人は、これは止むを得んから生活保護法の規定によつて保護を講ずるが、單に按摩だけをやつて生活を維持するということもありましようから、ちよつと手心ということは厚生大臣として答えられませんので、それらの点につきましては十分に再教育の方面で努力して、眼明き以上の技術を持つように進めて上げたい、こういう考えを持つておるのであります。
さように御了承を願いたいと思います。


○姫井伊介君

今まで盲人の技術に対して危險、弊害ということは余り聞いておりませんが、それはまあ別問題といたしまして、さつきのお尋ねは私の言葉が足りなかつたのでありますが、技術の方を主として頂けば、これは勿論結構でありますが、ただ学術の点なのであります。
学科試驗におきまして盲人が一般の人と同樣にということに非常に難点があるので、その点を私は多少の手心と言つたので、そこに多少一種とか二種とかいつたものを付けられまして、こういう人は学術の点はこうだというふうに、そこにいわゆる手心を與えられて技術そのものにつきましては、むしろ一般の人よりも優れておる点もあるのでありますから、その点を申すわけではありません。
学科の点につきまして何とか御考慮を願えないかということを申すのであります。


○國務大臣(一松定吉君)

それが、厚生大臣が盲人に対しては特別に考慮するというようなことはちよつと言えません。
ただいわゆる盲人でありましても、点字教育の盛んになつておりまする今日でありますから、盲人であるけれども、今日のいろいろな時局を知るために、いわゆる点字新聞によつて十分に知識を受けることができることは、私が申上げなくても、姫井委員の御承知の通りでありますが、そういうことによりまして目明きの人に決して劣らないような教育を受ける、これは將來資格を與える問題でありますから既得権の問題ではない。
將來資格を與えるような点については、そういうような方針で進むというようなことを考えておりますから、あなたの御心配も点字教育によつて他の目明きの人と同じように私は進み得るという確信を持つておる。
点字教育ということは今日優れて参つておりますから、盲でありましても普通人くらいの知識を得ることは十分だと考えておりますから、特にそういう点については考慮を拂いますけれども、特別の取扱いで学科試驗をするということは、ちよつと私から申上げられません。これはこの辺でお許しを願います。


○千田正君

どうも今の厚生大臣のお話は、非常に私は盲人の立場に同情して見ますというと、受取りかねる点があるのであります。
それは厚生大臣は博学の方であるから御存じであると思いますが、盲人に対して鍼灸を許したのは徳川時代のいかに盲人を保護するかという政策の現われである。
盲人以外に絶対に鍼灸を許さなかつたということは徳川時代の保護政策である。
今日この文明になつて、而もこの民主主義の政治下で、特に盲人のために厚生大臣として考えられる点から言えば、そこに多少希望の点を取つて頂けないかということを、政治家という立場、又民主政治という意味から、特にその人達のために特段のお考えをいたして頂きたい。こういう点について特に申上げる次第であります。


○國務大臣(一松定吉君)

盲人を保護しなければならんという保護政策という点においては、全くあなたと同感であります。
いわゆる國家として國民を十分に保護しなければならん義務があることは言うまでもありません。
盲人が他に適当な職のないということのために、徳川時代にこういう保護政策で按摩とか、鍼とかいうものをあの時分には特に盲人だけに與えられておつたことも承知しておりますが、今日では盲人だけというわけには行かんので、目明きの方もやつておる。
聞くところによりますと、目明きの人々が、盲人が鍼をするのは危險だから盲人にはさせるなという運動をやつておるということでありますが、それはいけない。
保護しなければならん。保護するについては保護するような方法を採る。
試驗をすることに特別に手心をせよということはいかん。保護は十分にいたすつもりですが、そこは誤解のないように願いたい。
手心をしなければ保護にならんということは困る。
手心をしなくても保護の方法はあろうと思います。
さよう一つ御了承願いたい。


○委員長(塚本重藏君)

この問題はこの程度で、ちよつと時間を拜借しまして、藤森委員から医療制度の調査に関する小委員会の報告を求めます。


○藤森眞治君

本委員会におきまして医療制度を調査研究するという小委員会が設けられまして、その後数回に亘りまして、どういうふうな観点から医療制度というものを審議して行くべきものかということを数回に亘りまして打合会を開いて、漸くその一案を得ましたので、それを今日御報告申上げたいと存じます。

 医療制度審議要領というものを設けました。

それの第一に、医療制度という大きな問題を取上げまして、その中の
  第一として医療國営問題、
  第二、國営医療(國営官営)というような医療の研究、
  第三は、民営医療(開業医)、
  第四、公営医療、これは都道府縣営、農業会営、或いは國民保險組合の経営、
  第五に公共営に準ずる医療、
   これには赤十字社、或いは披済会、宗教團体その他のもの、これをイ、ロ、ハ、ニと分けまして、
    イは国営医療と民営医療との関係、
    ロは公営、公共営医療の問題、
    ハは國営医療機関の性格、
     その一といたしまして、特殊疾病に対する場合、
     その二としまして一般疾病に対する場合、
      ニといたしまして民営医療機関の性格、
        これの中で開業医制度、その一として自由開業、
        二は制限開業、
大きな第二としまして、社会保險を取上げます。
 その第一には、健康保險及び職員保險、
 第二が國民健康保險、
 第三が労働災害保險、
 第四が船員保險、その中にイ、ロ、ハを作りまして、
   社会保險の一元化、
   診療費問題、
   診療報酬に対する課税問題、
それから今度は大きな第三といたしまして、生活保護法による救済、医療の救済であります。
第四として医藥品及び衞生材料について、これを、い、ろ、は、に、ほ、へ、とと分けまして、
  いは医療薬品等の生産増強、
  ろは医療藥品等の輸入墾請、
  はは医療藥品等の配分、
  に、医療藥品等の價格問題、
  ほ、医療藥品國営問題、
  へ、生産増強等の視察調査、
  と、局方外藥品及び賣藥に関する問題、
第五といたしまして、適正医療費の問題、
第六、医療問題と医師会との関係、
第七、國民医療法の改正問題、

こういうふうに遂次分類いたしまして、これを審議要領として進めることに先般小委員会で決議いたしましたので、これを御報告申上げる次第でありまして、只今はこの医療制度ということについて、先ず檢討を加えつつありますることを御報告申上げます。

 
 
 

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